先輩がくれた勇気 「あなたなら、できる」
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 「『君には、無理だよ』という人の言うことを聞いてはいけない」。NBAのスーパースター、マジック・ジョンソンの言葉です。

 長く続けた県内の公立小・中学校の教師生活に別れを告げて、ニューハーフダンサーを目指して上京。その直接のきっかけとなったのは、ニューハーフショーの美しさに衝撃を受けたからです。

 ショーそのものの美しさももちろんですが、彼女たちがそれぞれに悩みを持ちながらも、それに負けずに堂々と踊り、覚悟をもって生きる生きざまに心を動かされたことが大きかったのだと思います。

 思い立ったら即行動。しかし、数十年の男性としての人生がこの体に刻み込んだ生活様式は根深く、ちょっとやそっとの努力では全く意味がありません。

 体格や容姿的には恵まれていないことは自覚していたのですが、女性雑誌を見ながら独学でメーク方法を学びました。しかし、すぐに限界を感じました。この状態で、いきなりプロになることは不可能でしたから、まず、素人女装のコミュニティーで、メークや着こなし、男らしさの消し方を身に付けることにしました。

 初めて、女装スナックの扉を開けた日のことを今でも鮮明に覚えています。

 歌舞伎町の素人女装者が集まるスナックに、道具持参で男の姿のまま入って、事情を話すと、きれいな女装者が、丁寧にメークを施してくれました。

 それを見ていた男性客の1人が「お兄さん、やめとけよ。あんたじゃムリだ!」。女性客は「不細工!不細工!」とののしる始末。ベテランの女装者の中には「あんたニューハーフになりたいの? 女装上がりでなれるのはほんのわずか。あんたじゃあ絶対に無理だ!」と太鼓判!。

 ホテルに帰って朝まで泣きました。

 そんな時、助けてくれたのが、紹介されて入った、着替え部屋の先輩方。お化粧の仕方から服の買い方、ヘアスタイルや心の持ち方まで、随分お世話になりました。ある先輩はこんな言葉をかけてくださいました。

 「人をバカにする人は、どこか自分に自信がない人なのよ。それを、努力で克服するより、人を見下して自分を慰めているだけよ。そんなことで、へこんじゃダメ! それから、若い子やきれいな子をうらやんじゃダメ! そこで、自分の努力が止まってしまうわ。人との競争ではなく、自分をしっかり持って、納得するまで自分を磨けばいいじゃない。あなたなら、できるわ!」

 温かいお言葉に、涙が止まりませんでした。

 あの時、素晴らしい先輩方に巡り合っていなかったら、その後プロとしてニューハーフショーの舞台に立つことはなかったことでしょう。



シャンソン・カンツォーネ歌手 村上リサ 東京都板橋区

 【略歴】県内公立中で音楽教諭をしながら、草津国際音楽アカデミーでE・ヘフリガー氏に師事。ショーダンサーを経て、歌手として活動。東吾妻町出身。東京音楽大卒。
 
2019/09/23掲載

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