パレスチナのごみ問題 自立した循環型社会へ
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 「Reduce your waste, Improve your life」(ごみを減らして、生活の改善を)。これは、今年2019年、パレスチナ政府が独自に立ち上げたごみ減量化のためのナショナル・キャンペーンのスローガンだ。

 昨年末、パレスチナ地方自治庁の職員と私で数日間にわたって侃々諤々(かんかんがくがく)議論し、多数の候補の中から最も単純なこの言葉に決まった。非常に端的な言葉であるが、現在パレスチナが抱えている問題を直接的に表している。

 パレスチナでは、人口増加によりごみの排出量が年々増加している一方で、最終埋め立て処分場の容量も限られている。ごみのポイ捨て、不法投棄もまだまだ日常的だ。これに対して、各家庭でのごみ排出量を抑制あるいはリサイクルすることで、埋め立てごみ量を減らし、さらに適正処分していくことが求められている。

 つまり、資源を大量消費・大量廃棄する社会から、ごみの発生抑制・再利用・リサイクル、さらに省資源化等による循環型社会への切り替えが必要になっているのだ。しかし、この問題に対する市民の意識がいまだ低く、その解決は進んでいなかった。

 危機感を感じた地方自治庁は今年、国を挙げて本格的にこの問題に取り組むことを決めた。取り組みの根幹が、冒頭のナショナル・キャンペーンだ。①パレスチナ全域での市民への啓発活動の実施②官産学民が一体となり問題を重要な課題として理解し解決推進のためのナショナル・カンファレンスの開催③小中学校の生徒に向けた環境教育の実施―などを行ってきた。

 また、世界同時に清掃活動を展開する「ワールド・クリーンアップ・デー」をパレスチナ各地で開催した。中央政府、地方自治体、市民等が一体となり清掃を行うことで、街の美化のみならず市民の環境意識の向上を図った。

 この1年間で、パレスチナのごみ問題は大きな前進を遂げたと思う。パレスチナ政府主導により、ごみ問題を国家の重要課題として位置づけ、循環型社会の形成に向けて市民を含む全ての関係者が一体となって取り組む決意をしたことが何より大きな前進だ。

 ごみ問題の解決には、地方行政が適切に行われ、市民を含む全ての関係者の参加が不可欠である。現在、紛争地であるパレスチナは、将来が未知数であるといっていい。しかし、人が生活している限り、ごみ問題等の環境問題は発生し、それに対する行政活動が必要になるのだ。

 つまり、JICAの支援により、ごみ問題を通じて強化された地方行政能力は、今後どんな未来においても必要な能力なのである。今年パレスチナのごみ問題は市民の参加により大きな前進を遂げたが、まだまだ第一歩に過ぎない。来年の20年には何が起こるか、期待したい。



国際協力機構(JICA)専門家 村田貴朗 前橋市下川町

 【略歴】2016年からJICAに勤務し、10カ国以上の環境プロジェクトに携わった。廃棄物管理の専門家としてパレスチナ地方自治庁に派遣された。京都大大学院修了。

2019/10/14掲載

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