健康支援のジレンマ 「相談していい」空気を
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 日本で働く女性の健康支援には、ジレンマが存在します。

 国家や会社は支援する理由が、個人は支援される必要性がそれぞれ明確にありますが、現実に、なかなか対策が進まないのです。

 今回は、その理想と現実のギャップを解説していきます。

 まず、国家にとっては、労働力確保や女性の権利の観点で非常に重要です。会社にとっても、法改正への対応やスキル人材の安定確保といった意義があります。そして本人は、切実なのに周囲に相談しにくい課題を抱える一方で、働き続けるために解決を望んでいます。

 しかし実際は、テーマの性質上、自己責任論や「恥の文化」が対策を阻み、多くの人が声をあげられない中、会社は問題の存在が見えず打ち手が後手に回り、結果本人は「いっそ黙っていた方が楽」という思考回路にはまり、問題がさらに潜ってしまう…。

 こうした悪循環の構造の下に、依然、このテーマは置かれているのです。

 このジレンマやギャップが、組織の現場レベルでも明らかになっています。経済産業省のデータでは、健康のことで、職場で過去に困った経験を聞いた調査で、働く女性たちの1位に挙がった回答は「月経トラブル」でした。これに対し、管理職が女性従業員の健康で対処に困ったことは何かと聞かれ、その1位は「メンタルヘルス」だったのです。

 ここからも浮き彫りになる特有の難しさは、「大切なことは目に見えていない」前提から始めなければいけないこと、かもしれません。

 この特殊性は、実際の人事制度や施策立案の際も、丁寧に考慮すべき点です。一般的に、組織が行う女性従業員の健康支援のうち、実効力のあるとされる施策の類系は以下4パターンに分けられます。①検診・受診推奨やヘルス・リテラシー啓発②相談窓口の設置や専門家アクセスの提供③休暇・休職、勤務形態の整備や治療関連の費用補助④社内理解促進、チームフォロー体制構築の支援―。

 これらを念頭に起きつつも、各社のステージや状況に応じ、まず第一に研修・啓発活動や相談窓口を通じたニーズ把握、潜在課題の見える化を行います。そして、得られた声から段階的に、制度設計や具体的な支援を行っていくことが得策なケースは多いでしょう。

 何より、従業員一人一人が「会社に相談してもいいんだ」と思える空気感を醸成することが、確実に会社を変え、多様な人材の相互理解促進や、ひいては生産性向上につながっていくはずです。

 次回は、組織で実際に支援対策を実行する際のポイントについて、具体的にお伝えしていければと思います。



ライフサカス社長 西部沙緒里 東京都荒川区

 【略歴】博報堂でマーケティングなどを経験。群馬イノベーションアワード2015ファイナリスト。16年に妊活や女性の健康を支援するライフサカスを起業。前橋市出身。

2019/10/17掲載

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