歴史博物館の役割 心豊かな文化的生活へ
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 「博物館行き」という言葉があります。「古くなって役に立たなくなったけれども、歴史的・文化的に意義がありそうなモノ」を意味するそうです。美術館の華やかさとは対照的に、歴史系の博物館は、古くさい、カビ臭い、暗いというイメージがつきまとっているようです。

 一般的には日常の生活に有用でなくなったモノ、貴重なモノ、珍奇なモノが陳列されている場所が想像されます。また、博物館館長は、性格は少しばかりお堅く、事務室の奥に座っていてとっつきにくい感じなのだそうです。

 3年半前にミュゼ館長についた頃、ある関係者からこのイメージを払拭するように諭されました。未経験の職場で自分ができることは、可能な限りお客さまと顔を合わせ、博物館の史料は「単なる陳列物」ではないことをご説明することぐらいでした。

 最初は拙い説明で、質問にも満足に答えられない状態でした。むしろお客さまから教えてもらうことの方が多かったように思います。入館料をいただいたうえに教えてもらうなんてとんでもないことですが、不思議なことにこのようなお客さまは上機嫌で、リピーターとして何度も来てくれるようになりました。

 館長に就任した日に「町の最大の問題は人口減少であり、交流人口を増やすことを第一に考えるように」と役場で訓示を受けました。博物館は教育機関なのだから、交流人口(来館者)を増やすことは主たる目的ではないとの意見もありました。私はこの意見に納得がいかず、来館者の倍増を目標に博物館事業経営を考えることが館長の仕事だと思うようになりました。

 50歳の頃から「人生の成功とは何か」を書いた啓発書を多読するようになり、最近、博物館の成功は、人生の成功哲学を実践することに似ていると思い始めています。

 人生の成功が「個々の人に与えられた才能・能力を最大限に発揮すること」であるとするならば、郷土博物館の成功は「町の埋もれた歴史や人物の潜在的な魅力を最大限にプロデュースすること」だと思うのです。それが、結果的に地元周辺の魅力を高め、自分たちの文化に誇りを持つことにつながり、地域のにぎわいをもたらします。

 博物館は「大衆の娯楽と教育のために展示することを目的とする恒久施設」である―。ユネスコはこう定義しています。

 博物館は教育施設でありながら、大衆の娯楽の一部でもあるべきです。研究教育機関の顔を前面に押し出さず、裾野を広くした考えにたって、大衆目線の博物館を目指すべきだと思っています。そして、物質至上の生活から心豊かな文化的生活へと転換することに資することができれば、活力をもたらす恒久施設として、博物館の存在価値はますます高まると信じます。



中之条町歴史と民俗の博物館「ミュゼ」館長 山口通喜 中之条町中之条町

 【略歴】パナソニックを早期退職した後、横浜開港資料館などに勤務し、2016年4月より現職。中之条町出身。東京外 国語大中国語学科卒。

2019/10/18掲載

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