幸せのサポート アートオンの君が好き
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 文章だとしっかりした人に思われることがあるが、実際の私はずいぶんと口下手で、ぼんやりとした人間だ。うまくしゃべれないのはずっとコンプレックスで、ああ今だめだなあと気づくと余計に口が重くなる。一言足りないのをくり返しながら仕事しているので、周りにも申し訳ない。私が社交的だったらアートオンはもっと発展してたかなあと想像して落胆したりする。

 私は就活を失敗し、半年以上、半分引きこもりになっていた。大学卒業の前後1年くらいが、人生でもっともしんどかった。合わない気候、学業の挫折、震災、就活の失敗が重なり、ずっと落ち込んでいた。家の中でやることがルーティン化していくので、一日一日があっけなく終わり、半年なんてあっという間だった。

 最近までこの頃への後悔とか挫折感がずっと続いていたが、人生には良い時も悪い時もある、という当たり前のことにようやく気づき、どうでもよくなった。

 心が沈みながらも、地元に帰ってきてから面接した会社があった。覇気がなく、もぞもぞと話す私に面接官は「今あなたの良いところを見つけようとしているのだけれど、一つも見つからないの」「人間は好き? 私にはそうは見えない」と言ってきた。その言い方は、やる気を測っているのではなく、採用したくなかったのだと思う。

 真に受けて、私は人間が嫌いなのか…とショックを受けたが、時がたち冷静になってくると、あの人も私を人間扱いしてくれてなかったなと思う。すっかりトラウマであり、あんな態度を私は人にとりたくないという教訓にしている。

 アートオンには精神障害の人たちも来ている。見た目でわからないので、こんなにいるもんなんだと最初驚いた。いじめられたり、就職でつまずいたりして自信を失っている人が多い。偏見を恐れたり、順調な同世代と比べたり、「何で自分が」という苦しみを抱えたり。その痛みのかけらは、私にも重なる部分ではあるのだ。社会でうまくやっていけない自分だからこそできる支援をしていきたい。

 人間が好きそうに見えない私が、がっつり対人の仕事をしているのは皮肉なものだ。

 私は知的障害がある人たちを中心に担当しているのだが、アートオンのメンバーは、癒やし系の人が多い。裏表がない人が、私のことを気に入ってくれた態度を取ったり、道に咲いてる花をくれたり、失敗したら励ましてくれたり。支援しているつもりが、こちらが支援されているようだ。

 私の個人的で感傷的な話などどうでもよく、関わったからには幸せな生活が送れるようサポートしたいと思う。人間全体についてはまだわからないが、彼らのことは好きである。



NPO法人工房あかねアトリエART・ON支援員 上野理津子 高崎市大沢町

 【略歴】2013年、障がいを持っている人たちの芸術活動を支援する「NPO法人工房あかね」に入職。半年後より現職。高崎女子高―金沢美術工芸大芸術学専攻卒。

2019/11/03掲載

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