家庭料理の呪縛 「一汁三菜」からの解放
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 和食が日本の伝統的な食文化としてユネスコの無形文化遺産として登録されてから、6年が過ぎました。

 ①多様で新鮮な食材と持ち味の尊重②自然の美しさや季節の移ろいの表現③年中行事との密接な関係④健康的な食生活を支える栄養バランス―が和食の四つの特徴として認められました。

 寿司(すし)などの具体的な料理が登録されたわけではなく、自然を尊ぶ日本人の気質に基づいた食に関する習わしが無形文化遺産として登録されました。

 これに先立ち醤油(しょうゆ)業界では2006年から「しょうゆもの知り博士の出前授業」と題して小学校に出向き、醤油の良さ、食の大切さを伝えていく食育活動に取り組んでおり、実施累計は全国で5千校を超えました。

 和食の伝統を受けて日本の家庭料理はご飯を中心とした一汁三菜が日常の食であるとされてきました。一方で日ごろの食事の用意や調理に当たっては、一汁三菜のイメージが呪縛となって家庭料理のハードルを上げてしまっていないでしょうか。

 料理研究家の土井善晴さんは「一汁一菜でよいという提案」という本の中で、忙しい毎日に続けられる食事は一汁一菜であり、一汁一菜こそが和食の原点であり家庭料理の原点であるとおっしゃっています。おかずをどうしようという悩みから解放されて、本当に作りたい、食べたい、食べさせたいという一汁一菜を考えて料理を本来の意味に戻すことを提案されています。

 献立を考えるときに「1日30品目」の食品摂取の悩みはないでしょうか。

 1日30品目は1985年厚生省から健康づくりのための食生活指針の中で提示されましたが、2000年には削除され「主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを」と改められました。実際に1日30品目を達成するとカロリーオーバーになってしまうという不都合もあったようです。

 フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんは「やせる3つのたべ方」の中で1日に穀物と13品目の摂取を推奨されています。参考にされてはいかがでしょうか。

 07年に農林水産省の主催のもと農山漁村の郷土料理百選が選定されました。群馬県からは生芋こんにゃく料理とおっきりこみが選出されています。

 おっきりこみは一汁一菜や一汁一飯をしのぐ究極の具だくさん一汁と言えるかも知れません(翌朝のたてっけぇしは究極のファストフード?)。

 忙しい毎日の中で家庭での料理は家族の関心事であり、それに悩みも多いものですが、「ていねいなくらし」と大上段に構えることなく、まず要らぬハードルは下げておく必要はないでしょうか。

 さっそく、醤油を使って夕食には何を作りましょうか。



正田醤油発酵研究所所長 笠原貢 栃木県佐野市

 【略歴】正田醤油館林工場長を経て、2007年から現職。日本醤油協会「しょうゆもの知り博士」。専門は応用微生物学、醸造学。藤岡市出身。高崎高―岩手大卒。

2019/11/17掲載

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