持続可能な仕組みへ 観光は地域づくり産業
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 日本全体で「地域づくり」といった言葉や活動が活発になって数年がたち、これまで観光に注目していなかった地域でも「観光」という言葉が聞かれるようになりました。

 そして今日、日本版DMO制度(観光庁による登録制度、2015年度創設)により観光振興を基軸とした地域づくりが全国で加速しています。日本版DMOとは、観光地域づくりのかじ取り役として、明確なコンセプトに基づき、その実現に向けた戦略を策定・実施をするための調整機能を備えた法人のことです。

 今回は、私が考える「地域の観光振興の基本と課題」についてお話しします。

 なぜ今これほどまでに観光に注目が集まるのかというと、二つの理由が考えられます。一つ目は、20年の東京オリンピックを目前に控えたことによるインバウンドの増加です。二つ目は、観光が世界的に成長産業として注目されている分野であるため、地域に観光を取り入れることで経済の活発化を期待するものです。近年、観光振興は地域づくりの中心的役割として位置づけられてきました。

 経済効果以外に社会的な効果が期待できます。例えば、観光客が利用する飲食や宿泊の需要が増えれば、地域に根をおろす農林業や商工業も恩恵を受け、地域産業にとっては新たなシェアの獲得になります。ひいては後継者不足の解消や、人口減少と高齢化の緩和につながります。

 さらに、観光客が訪れることで地域の知名度が上がれば、これまで注目されていなかった地域資源の価値を再発見できます。観光客が公共バスや鉄道を利用することにより稼働率が上がれば、廃線の危機を救うかもしれません。

 つまり観光とは、地域の持続可能な仕組みを作り出す基盤となるのです。こうした循環型の効果を住民が感じ取ることができれば、みんなで観光に取り組もうという意識につながるでしょう。

 しかし、日本において観光は、まだまだ娯楽というイメージが強く、観光を産業として捉えるほか、その本質が浸透するまでには至っていません。これは日本特有の課題であると感じます。海外では、観光が非常に関心の高い産業分野に位置づけられているからです。

 課題への第一歩としては、地域全体が「観光は地域づくり産業」という概念を持ち、取り組みに対して賛同していく環境づくりを行うことが必要です。それなくして観光イベントや宣伝活動を行っても、一元的な活動で終わってしまいます。

 また、本来の地域づくりの視点に加え、時には専門的な地域戦略を取り入れることも必要かもしれません。次の発展を考える段階にある今、多くの人が観光に取り組むことにより、日本全体でより良い観光地域づくりが発展していくことを期待します。



グローバル観光戦略研究所研究員 大井田琴 高崎市石原町

 【略歴】民間企業、下仁田町観光協会を経て現職。同協会で日本版DMOの立ち上げに携わり、インバウンドの市場調査や国内外向け広報も担った。二松学舎大卒。

2019/11/24掲載

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