地方のまちで 関係人口が幸せを呼ぶ
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 「関係人口」という新しい言葉を知っていますか? 簡単に説明すると、「観光以上、移住未満」の人たちのことを指します。

 例えば、みなさんの暮らす群馬県の地域に、こんな人たちがやって来ていないでしょうか。「あの女の子たち、先月もこの集落で見かけたな。地元の若者とともに駅前でマルシェをやったり、畑の作物を収穫したり、空き家のリノベーションを手伝っている。とても楽しそうだ」。そう、これが「関係人口」。

 ただ観光でその土地を訪れるのでもなく、かといって移住先を探しているわけでもない、特定の地域との関わりを段階的に深めていく人たち。これまでの人口区分では見つけにくかった、交流人口と定住人口のあいだの「第三の人口」です。ぼくはこの「関係人口」の提唱者のひとりと言われています。

 人口が急激に減少していく日本の社会で、現実的に増やすことのできる人口として、「関係人口」は、国の地方創生に係る省庁から注目され、国策として今年の6月に定められた「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」の「地方への新しいひとの流れをつくる」という項目に「関係人口の創出・拡大」が盛り込まれました。造語ですが、国までもが後押しする、地方創生の重要なキーワードになったわけです。

 ぼくは社会と環境をテーマにした雑誌『ソトコト』の編集長を務めていて、この「関係人口」につながる動きを、雑誌の取材を通して08年ごろから感じていました(ちょうどリーマンショックが起きたときです)。その舞台となったのは、日本の各地にある中山間地域。そしてキーパーソンは、東京をはじめとした大都市に暮らす若者でした。

 若者は常に「自分が何者か」を問い、悩み、考える存在です。東京生まれ東京育ちのふるさとを持たない「ふるさと難民」の若者と、都会の大企業に就職して、「いま自分がやっている仕事が、いったい誰のためになっているか」に答えを見いだせない若者が、都市が追求していった先鋭的なものとはまた異なる「つながり」や「あたたかさ」という有機的な価値観を大切にしてきた中山間地域の強さと魅力にひかれていったのです。

 そして、地域に関わる楽しさに目覚めた都会の若者たちが年々増え、地方や中山間地域を訪れる「関係人口」が顕在化していきました。

 「『関係人口』が増えていったら、何がその地域で起きるのか。経済的な効果はあるのか?」。この問いを各地の講演会や国の会議で、先輩世代や地方創生の専門家の方によく聞かれるのですが、いつも端的にこう答えています。「まちに関わる人が増え、まちが幸せになる」と。その土地に華やかな若者が歩き出し、にぎやかな笑い声があふれ、まちがパッと明るくなる。実はとても大切なことです。



月刊ソトコト編集長 指出一正 東京都世田谷区

 【略歴】雑誌「Rod and Reel」編集長を経て現職。「関係人口」を提唱し、内閣官房や環境省の委員も務める。高崎市出身。高崎高―上智大卒。

2019/12/3掲載

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