ファミリーホーム 変わらずにそこにいる
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 家族と離れて暮らす子どもたちがいる。群馬県で482人、全国で3万4846人の子どもが、乳児院や児童養護施設・里親等で暮らしている(2018年3月末)。親からの不適切な関わりや親の精神疾患・経済的理由など事情はさまざまである。家庭に代わり社会的責任で養育することを社会的養護という。

 欧米主要国では社会的養護の必要な児童のおおむね半数以上が里親に委託される。中でもオーストラリアの子どもたちは9割を超えて里親の家で暮らす。日本の子どもたちの場合は、親の希望や制度的なこともあり、施設で暮らす子が多い。しかし、ここ10年で里親委託児童数は約2倍になり、児童養護施設の入所児童は2割減になった。

 その背景に、児童が心身ともに健やかに養育されるよう「より家庭に近い環境」を優先にした養育の推進が図られるようになったことがある。施設養護もできる限り家庭的な養育環境の形態に変えていくことが求められ、大きな転換期を迎えている。

 私も長年お世話になった児童養護施設を退職し、自宅で6人の子どもたちとの暮らしを始めた。家庭と同様の養育環境で、一人一人の子どもの日常に寄り添う。小規模住居型児童養育事業、ファミリーホームという。勤務時間のない生き方に大きく変わった。

 子どもたちは朝6時をまわるとおのおのに目を覚まし、朝食を済ませ、地域の幼稚園・小学校・中学校・高校へとそれぞれ出かけて行く。

 私の仕事は世の中のお母さんと同じ、「子育て」と「家事」である。年齢や性別、特性に関係なく、どの子もとてもかわいく、成長に感動する日々である。一方で、成育歴から受けた心の深い傷に寄り添い、日常を通して引き出される「つまずき」に真剣に向きあっていく。

 受けたかった人から受けられなかった愛の絆(愛着)の影響は大きい。発達の特性から起こる問題、対人関係のつまずき、自傷行為、いじめ、不登校、犯罪、親子関係の修復などにも直面する。

 どんな出来事が起きても、繰り返されても、変わらずご飯をつくり、変わらず対話し、変わらずそこにいて、子どもの存在価値・自己肯定感を育んでいく。大人が投げ出さない限り子どもはきちんと向き合い心の成長をしていく。

 何度つまずいたっていい。それをチャンスに変えていく。日常が認知行動療法である。そうしていくうち、悲しみの涙を流していた子が喜びの涙を流すようになる。

 私は子どもに言う。「大人も完璧な人はいない。気をつけていても嫌な思いをさせてしまうこともある。気づかないこともある。そんな時は教えてね」

 「ごめんね。ありがとう」。大人も子どもも、曇りない純粋さを日常的に伝え合える「ゆとり社会」を願う。



ファミリーホーム「循環の森やまの家」代表 宮子宏江 前橋市富士見町引田

 【略歴】前橋市の児童養護施設「鐘の鳴る丘少年の家」に勤務した後、2017年6月にファミリーホーム「循環の森やまの家」を立ち上げる。伊勢崎市出身。

2019/12/08掲載

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