国民保養温泉地第1号 「違い」が生み出す魅力
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 2009年に地元の四万温泉にUターン就職し、あっという間に10年が経過した。

 08年9月に米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界中がパニックに見舞われ、弱っていた日本経済に追い打ちをかけた。11年には東日本大震災が発生し、甚大な被害をもたらした。大震災後は、自粛ムードもあり、四万温泉の宿泊客数は前年比88%と落ち込んだ。その後、徐々に宿泊客数は微増していったが、大震災前の水準までは到底戻っていない。

 四万温泉の魅力とはなんだろうか。四万温泉の開湯は1030年前と古く、江戸時代には湯宿が開かれ、湯治客でにぎわった。1949年に上信越高原国立公園に指定、54年には国民保養温泉地の第1号に指定され、日本三大胃腸病の湯(飲泉ができる)といわれている。

 昭和レトロな温泉街落合通りや、無料で気軽に利用できる共同浴場など、源泉は42本中39本が自噴泉で地球のパワーを感じることができる温泉で、宿の数より源泉の数の方が多い。これも大きなアピールポイントである。

 その中でも国民保養温泉地の指定条件には四万温泉の本質的な魅力が隠されている。国民保養温泉地とは温泉の公共的利用増進のため、温泉利用の効果が十分期待され、かつ、健全な保養地として活用される温泉地を「温泉法」に基づき、環境大臣が指定するものだ。

 環境省のホームページによると、次のような指定条件になっている。①利用源泉が療養泉であること②利用する温泉の湧出量が豊富であること。湧出量の目安は温泉利用者1人当たり毎分0.5リットル以上であること③自然環境、まちなみ、歴史、風土、文化などの観点から保養地として適していること④医学的立場から適正な温泉利用や健康管理について指導が可能な医師の配置計画または同医師との連携のもと入浴方法などの指導ができる人材の配置計画もしくは育成方針などが確立していること⑤温泉資源の保護、温泉の衛生管理、温泉の公共的利用の増進並びに高齢者および障害者などへの配慮に関する取り組みを適切に行うとしていること⑥災害防止に関する取り組みが充実していること―。

 全国に温泉地は3155カ所ある(2015年観光経済新聞調べ)。宿泊だけでなく、今は東京などの都会でもスーパー銭湯や日帰り温泉など気軽に温泉を楽しむことができる。

 「他の温泉地との違いは何?」。これは、お客さまからもマスコミからもよく受ける質問であり、この「違い」を明確に分かりやすく打ち出すことが、今後の温泉地にとって重要なポイントである。人間の本質的な温泉文化への信仰に訴えるには、国民保養温泉地に立ち返ってみるのもいいかもしれない。



四万温泉協会事務局長 宮﨑博行 中之条町四万

 【略歴】広報を担当し、女子旅やヘルスツーリズムの企画を手掛けた。四万温泉がロケ地の映画「まく子」の撮影に協力。2019年4月から事務局長。駿河台大卒。

2019/12/27掲載

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