地方創生のツール 歴史文化力を高めよう
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 京都は今、観光公害に悩まされている。平日であっても宿泊が困難な状態が続き、市民の日常生活にまで影響を及ぼしている。名所・旧跡は観光客がひしめき合い、休日ともなれば人であふれかえる。

 京都がそこまで人気な理由は何だろうか。京都というブランドの力もあるだろう。だが、それだけではない。日本の歴史文化が守られ、それを体感できるからこそ、人々は京都に向かうのである。

 私が言う歴史文化とは、日本の歴史と伝統・風習そのものであり、その上に成立する生活・信仰・思考のあり方、それに根ざす芸術、文学、社会意識・道徳・規範であり、建築物、遺物・遺構、文書、そして歴史学そのものを含む包括的な概念である。

 歴史文化は地域振興を目指す地方にとって、インバウンドを取り込むための重要なコンテンツとなり得るし、地方創生にあたっても、その利用価値は極めて高い。

 一方、群馬県は歴史文化を追い求める人々の恩恵をあまり受けていないように思える。これは歴史文化を支える基盤が脆弱(ぜいじゃく)なためである。県内には16も大学がありながら、文学・哲学・歴史といった人文科学の学問を総合的に学べる大学が存在しない。とりわけ歴史学を学べる大学が一つもないことは、歴史文化の発展に及ぼす影響は少なくない。

 長野県飯田市は人口約10万の地方都市だが、飯田市歴史研究所という市立の研究機関が存在し、修士以上の学位を持つ歴史学の専門家が研究活動に専従し、勉強会の開催や学術誌の発行を行っている。

 世界遺産があるにもかかわらず歴史学を学ぶ場が制約されている群馬にあって歴史文化力を高めようとするのであれば、飯田市のような研究機関の設置も検討すべきだと考える。現在、群馬での歴史研究は、博物館が中心とならざるを得ない状況である。

 登録博物館という制度がある。博物館法に決められた基準を満たし都道府県教育委員会に登録された博物館のことで、これに準じる博物館相当施設というものもある。県内の12市で登録博物館・博物館相当施設が存在しないのは3市で、藤岡市はその一つである。博物館や研究機関の存在は、地域振興だけでなく教育環境の向上にも寄与するが、藤岡には文化財収蔵庫があるのみだ。

 藤岡は古代から近現代に至るまで、歴史的な遺物・史料などが数多く存在し、潜在的な歴史文化力は高いはずである。これらを有効活用して、歴史文化の薫る魅力あるまちづくりを行い、どのように地域振興を行うかは市民の意識と行動にかかっている。

 藤岡学は、市の活性化のために歴史文化をどう保存活用するのかを考える機会を提供し、いずれは知の拠点化を図りたい。歴史文化を守り伝え、藤岡の価値を高めること、それが藤岡学の役割である。



藤岡学研究会代表 塩出環 藤岡市三本木

 【略歴】2019年に同会を発足。行政書士。高校非常勤講師。元同志社大人文科学研究所研究員。専門は日本近現代史。神戸大大学院博士課程修了。博士(学術)。

2020/01/16掲載

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