観光のターゲット 富裕層のニーズ応えて
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 昨年12月、地域経済の活性化に向け、外国人観光客の受け入れを拡大する必要があるとして、全国に「世界レベル」の高級ホテルを50カ所程度新設するという政府方針が発表されました。

 ラグジュアリーツーリズム(富裕層)の受け入れを強化するということです。これは、日本の観光産業が長年意識してこなかったために弱点とされる分野でした。この大規模なインバウンド対策は「観光立国」を目指す日本にとって大きな進展です。

 今回は、富裕層の誘致から考える「地域が目指すべきマーケットの構図」についてお話ししたいと思います。

 日本が訪日旅行の誘致に本格的に力を入れ始めたのは、政府が2003年にビジット・ジャパン事業を始めてからです。この時に初めて「訪日旅行者年間1千万人」という数値目標が立てられ、13年にようやく達成されました。同年に東京オリンピックの開催が決定すると、翌14年には「20年までに年間2千万人」という目標が立てられます。

 さまざまな追い風があり15年に訪日旅行者が1974万人に迫ったことで目標の早期達成が確実になると、16年には「20年までに年間4千万人、旅行消費額8兆円」「30年までに年間6千万人、旅行消費額15兆円」という新たな目標が立てられます。データは日本政府観光局(JNTO)に基づきます。

 特に重要なのは「旅行消費額」で、客数を増やすことよりも旅行者1人あたりの平均単価を上げることに目標の本質があり、富裕層の受け入れは平均単価を上げる市場拡大のための最善策なのです。

 ただ、実際の地域の観光振興の現場では、入り込み数(単純な来訪客数)を伸ばすことばかりに力を注ぐ傾向があります。日本の観光産業が長年重視してきたスタイルなので仕方のないことなのかもしれません。

 お客さまを増やすことは重要ですが、数を求めるあまり単価の低いターゲットを狙い、限られた客単価に対する画一的なサービスばかりを提供していても、長期的に経済を支えていくのは困難です。もちろん、そうしたお客さまも大切ですが、観光による地域振興を目指すのであれば、もっと本気で個人客や富裕層などの多様なニーズに応えていくことが重要です。

 そうすることでサービスの質が高まり、新しいマーケットの獲得ができれば、地域全体への経済的な波及効果につながるからです。

 JNTOのデータによると、インバウンド需要は08年のリーマンショック以降も右肩上がりを続けています。今後も成長が期待される、地域こそ真剣に取り組むべき「希望の産業」です。多くの労力を要しますが、新たなマーケットを着実に開拓していく上では価値のある取り組みではないでしょうか。



グローバル観光戦略研究所研究員 大井田琴 高崎市石原町

 【略歴】民間企業、下仁田町観光協会を経て現職。同協会で日本版DMOの立ち上げに携わり、インバウンドの市場調査や国内外向け広報も担った。二松学舎大卒。

2020/01/20掲載

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