僕、やりたい! 未来をつかみ取る挑戦
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 「漫才のワークショップ」(以下、漫才WS)という企画があります。参加者は簡単な漫才台本を覚え、友達とコンビを組んで練習した後、ステージで発表します。参加者みんなでそれを見て笑って「よくできた!」と拍手を送ります。

 ポイントは①台本が虫食いになっていて、自己紹介部分と最後のボケとツッコミを考える②ディスカッションして台本を仕上げる③大きな声で披露する―の三つです。

 社会で必要な能力を、お笑いというコミュニケーションツールを使って楽しく学んでもらおうと企画しました。

 漫才WSは普段、小学校の高学年を対象にすることが多いのですが、児童数が少ないある山間部の小学校で、学校全体を対象に実施したことがありました。学校全体ということで、特別支援学級の児童数人にも参加してもらうことになりました。

 当日、特別支援学級の先生から「練習はしてみたんですが、ちょっと難しかったみたいです。今日は見学に回らせてください」と話がありました。誰よりもその子たちを見ている先生の判断です。「それじゃあ、みんなの発表を楽しんでください」となり、本番の発表が始まりました。

 1年生から漫才を発表していきます。ある子は、台本に忠実に練習の成果を発揮し、またある子は、元気だけは1等賞。普段は物静かなのに、予想を裏切るユーモアセンスで見事に大きな笑いをかっさらう子。それぞれの個性がステージの上で輝きます。

 そんな時に1人の子が言いました。「僕もやりたい!」。特別支援学級の男の子でした。

 先生と話し合い、「無理だったら途中でやめたっていい。とりあえず、やってみましょう」と、その子の意思を尊重することになりました。即席で僕の相方とコンビを組み、2人の順番がやってきました。

 子どもたちは相変わらずニコニコと、大人だけが不安で緊張しているところに、出ばやしが鳴り、「はいどうもー」と2人が元気に出てきました。なんとその男の子、しっかりと台本を覚えていたし、元気に笑顔で、最後まで堂々とやり切ったのです。

 僕たちも驚きましたが、なによりも、先生が舞台袖でその子を抱きしめて泣いていました。これが、「地域におけるお笑いの可能性」だと簡単に言う気はありませんが、町をどうにかしたくて独り立ち上がり、市と学校の協力を得て、みんなで一から組み立てて、最後にこんな瞬間が作れたことは、最高に幸せでした。

 地域を笑いで盛り上げるプロジェクト。笑いって身近で簡単そうで、だけど意外と難しくて、でもその分素晴らしい力を持っていると思います。笑いの力でやれること、存在意義、まだまだあるじゃんって確信して、「やりたい!」て決意した、そんなターニングポイントのお話でした。



群馬住みます芸人アンカンミンカン 富所哲平 みどり市大間々町大間々

 【略歴】2007年に川島大輔さんとお笑いコンビ「アンカンミンカン」を結成。11年からみどり市観光大使、12年からぐんま特使。吉本興業所属。千葉大卒。

2020/02/09掲載

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