発達障害を考える② 本人のための早期診断
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 前回、小児医療に携わる立場から発達障害を取り巻く問題を取り上げました。今回は、企業の現場からこの問題を考えていきたいと思います。

 私は小児医療に携わるとともに、産業医として働き始めて4年目になります。産業医は企業において、産業衛生スタッフの一員として全ての就業者の健康と生産性の向上の両立に寄与する職種です。

 現在、私は県内数社の産業衛生の現場に携わり、従業員の健康支援をしております。最近は、各企業で「健康経営」の考え方が浸透しつつありますが、まだまだメンタルの不調で、休職を余儀なくされる方々がいます。そして、その中に、自閉スペクトラム症・注意欠如多動症など発達障害を基礎に持つと思われる方が、少なくない現状があるのです。

 医療機関を受診しても、投薬などの治療は行われますが、発達障害の診断が出ることは少なく、自身の理解、周囲の理解と環境調整が進まないことがあります。

 こうしたことで①休職を繰り返し、果ては退職まで、余儀なくされる方②さまざまな困難に出合って2次障害を起こし、発達障害の診断がようやく出る方③自閉スペクトラム症・注意欠如多動症など発達障害と医学的診断を受けているものの、発達障害の適切な支援を、本人も周囲も知らず、お互いが大変な思いをしている場合―などが見られます。

 産業現場においても、この決してまれではない発達障害を取り巻く問題が山積しているのです。

 これまで私は、発達障害の早期発見・早期診断・早期支援の現場に、小児科医師として、関わらせていただいてきました。「医学的診断を希望する」という選択をされた保護者の方に、科学的根拠を基に、医学的診断をお伝えしてきたのですが、産業現場にも携わるようになり、改めて、発達障害を基礎に持つことを、本人が知っていること、そしてその診断を自分自身で伝えられることの大切さを痛感しております。

 診断は何より本人のものであり、本人が自分自身のことを知るための大事な情報です。2次障害を予防することはもちろんですが、まさに自分自身の取り扱いを助けるものです。

 「自分自身のことを肯定的に知る」(自己認知支援)を、本人に早期より届ける。そして、周囲の正しい理解のもと、自分らしく豊かに健康的に成長していく―。つまり、こういうことです。

 ようやく県内でも早期発見・早期診断・早期支援の取り組みが進みつつあります。この取り組みがますます拡大することを願うとともに、もう一度基本に立ち返り、この取り組みは、保護者や支援者のものではなく、何より本人のためのものであることを忘れてはならないと思います。



NPO法人SUN-Tatebayashi理事長・医師 岡田恭典 栃木県佐野市

 【略歴】発達障害者支援指導者育成事業に携わる。館林厚生病院勤務、群馬大大学院小児科講師などを経て、現在は非常勤講師。産業医。東京都出身。同大医学部卒。

2020/02/13掲載

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