斬新奇抜なモーター 衛星の姿勢制御に威力
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 現在、群馬高専にて、若い学生たちとともに、キューブサットと呼ばれる超小型衛星の開発に取り組んでいる。

 このキューブサットは、大きさが10センチ×10センチ×22センチと通常の衛星と比べて極めて小さく、また、開発コストや開発期間が圧倒的に短縮できる点で、今後の宇宙開発において大いなる可能性を秘めている。しかし、その一方で、機器を搭載するための艤装(ぎそう)スペースに限りがあり、取り扱うことのできる供給電力も厳しい制限を受ける。

 われわれが開発を進めているキューブサットは革新技術実証衛星2号機として、イプシロンロケット5号機により打ち上げられる予定である。

 キューブサットには、革新的かつ挑戦的な技術課題がいくつかある。そのうちの一つに「高精度姿勢制御技術」が挙げられる。姿勢制御とは、衛星の向きを目標の方向に整えるもので、通常の大型衛星とは異なり、このような超小型衛星では困難とされている技術の一つである。

 革新技術実証衛星として、超小型衛星用の姿勢制御装置をどのようにして小型化、省電力化するか思案にくれていた日のことである。ある人物に出会った。斬新奇抜な高効率モーターの発明者、信正商事の野上正和氏である。野上氏の発明、開発したモーターは、従来のモーターの常識を逸脱するもので、驚愕(きょうがく)の代物である。少なくとも私自身はそう確信している。このモーターに、実にタイムリーに遭遇することができた。

 何人かの専門家が野上氏の発明したモーターを、ひと目見ようと訪れているそうだ。中には、懐疑的な見解を示す方もおられたようだ。確かに、実証データも豊富にあるわけでもなく、回転の動作メカニズムも詳細には分かっていない。野上氏の「手作り作品」である。

 ある程度の知識や経験、専門性を持ち合わせた人たちは、斬新なものを受け入れる敷居が高く設定されているのかもしれない。

 よく日本人は派生や改良などの技術を得意としていると言われている。教育や習慣に起因していると思われる。何か新しい物を創出するとき、日本の学生は、まず、調べごとや勉強などの基礎知識の習得から始めるらしい。それに対して、欧米の学生は、まず、手を動かし試作、実験などを実施するそうだ。

 絵画や純数学に見られるように、奇抜であればあるほど、その価値が知れ渡るのには、時間を要することもあるようだ。

 野上氏の発明を活用した超小型衛星用の姿勢制御装置の試作機が、学生の手作業により創り上げられ、期待をはるかに超える性能を示している。さらに、この高効率モーターは、海外から注目され始めており、世界に広く普及、活用されることを期待せずにはいられない。



群馬高専機械工学科准教授 平社信人 高崎市日光町

 【略歴】石川島播磨重工業(現IHI)入社後、IHIエアロスペースを経て、2009年から現職。愛知県出身。東京工業大大学院博士後期課程修了。博士(工学)。

2020/02/21掲載

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