受動喫煙対策 まだタバコ吸いますか
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 私はバブルが終焉(しゅうえん)を迎えた頃に医者になった。今よりは景気がよく、街は音楽と酒とタバコのにおいにあふれていた。酒場や会社だけでなく、学校や病院でも普通にタバコが吸われていた。大学教授は患者の前でタバコを吸いながら外来をやっていたし、煙で真っ白になる部屋でカンファレンスを行っていた。

 私の若い頃には、カッコつけるために吸ったが、時代は変わり最近の若者は酒もタバコもやらない人が多いらしい。「悪いものを本能的に受け付けない体に進化したのであろう」と、皮肉る人もいる。タバコが普及しだした江戸時代から、タバコに害があることは知られていた。貝原益軒の『養生訓』にも「病をなす事あり。くせになり、むさぼりて後には止めがたし」などの記述がある。

 1993年の喫煙率は、男59.8%、女13.3%であったのに対し、2018年には男27.8%、女8.7%、男女合わせて17.9%と喫煙者は圧倒的に少数派になっている。男女とも40代が一番高く、続いて30代と50代、進化した20代と健康に気を遣い始めた60代は急激に減少している。

 私は30歳の誕生日にタバコをやめた。結婚しても、子どもができてもやめられなかったのを、なんでこんなに害があるものを続けているのだろうと、突然気が付きやめた。

 その時改めてタバコは中毒・依存症なのだとわかった。ニコチンが切れると、イライラして思考が定まらず、夜にはタバコを吸う夢をみた。灰皿に残された他人の吸い殻をくわえ火をつけようとしたこともある。まったく怖いものである。当時220円だったタバコは今500円近い。財産と健康を失わずにすんで本当に良かったと思う。

 安定的な税徴収のためにできた「たばこ税」は、喫煙者が減少しているにもかかわらず毎年2兆円の税をキープし、国民から財産と健康を吸い上げている。搾取され続けている人を何とか救いたい。

 望まない受動喫煙を防止することを柱とした改正健康増進法が4月1日、全面施行された。喫煙マナーはルールへと変わる。タバコの健康被害は、特に妊婦・子どもで大きい。妊娠中の喫煙・受動喫煙では流早産、前置胎盤、胎盤早期剝離や低体重児のリスクが高まる。子どもでは乳幼児突然死やぜんそく、肺炎などが増える。大人でも免疫が落ちるため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にもかかりやすくなるだろう。

 換気扇の下やベランダでの喫煙に分煙の効果はなく、吸い終わったあとの服や息、室内の壁などにも有害物質が長い時間残っていることがわかってきており、受動喫煙の害を防ぐのはなかなか難しい。社会全体で制度を整える必要がある。この法律の施行が進み、みんなの健康が害されることのない住みやすい社会になることを望む。



産科婦人科舘出張佐藤病院院長 佐藤雄一 高崎市竜見町

 【略歴】佐藤病院グループ代表。産婦人科専門医。生殖内分泌や腹腔(ふくくう)鏡手術が専門で、2007年に不妊治療専門施設を高崎市内に設立。順天堂大医学部卒。

2020/04/01掲載

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事