LNTとは 共有すべき環境倫理へ
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 Leave No Trace(LNT)とは、アウトドアユーザーが自然を楽しむために、自然へのインパクトを最小限にするためのテクニックを、シンプルな七つの原理にまとめたものです。

 北米において1960年代の余暇時間の増大に伴い、国立公園をはじめとする豊かな自然環境に大きなダメージを及ぼしたことを受け、米国の森林局、国立公園局、土地管理局、魚類野生動物局が提唱したミニマムインパクト運動がその起源となっています。

 その後、野外指導者養成団体である全米野外指導者学校がカリキュラム化し、現在の7原則に至っています。今日、40カ国以上で採用され、アウトドアユーザーの環境倫理の国際基準となっています。

 LNTの7原則は、次の通りです(公式訳=一般社団法人ウィルダネス・エデュケーション・ジャパン、13年)。

 ①事前の計画と準備②影響の少ない場所での活動③ごみの適切な処理④見たものはそのままに⑤最小限のたき火の影響⑥野生動物の尊重⑦他のビジターへの配慮。

 これらは、環境配慮テクニックの原理原則を示したものであり、これらの原理に基づき、あらゆる環境、活動、学習者に応じて、さまざまなテクニックが示されています。

 近年のアウトドアブームにより、多くの市民が気軽にアウトドアを楽しむようになりました。世界的にも他国のアウトドア活動を楽しむアドベンチャーツーリズムの潮流があり、自然の豊かな日本も確実にその目的地となっていきます。東京オリンピックを機に、外国人に対するインフラがますます整備され、現在のインバウンドの増加はしばらく継続するでしょう。

 一方、その受け皿となるわが国の公園管理はいかがでしょうか? 観光客の一極集中やモラルハザードにより、すでに観光公害が顕在化しています。わが国の公園管理は、その土地、管理団体のポリシーに基づき整備されてきたので、国内に普遍的な基準はなく、インバウンドにとって、これほど分かりにくいルールはないのではないでしょうか?

 LNTは、ルールを守るかどうかという視点ではなく、もちろんルールを守ることを前提としながら、同じ目的を達成するためには、どうしたらダメージを最小限にできるかという、利用者側のモラルを問題とします。ルールによる統制は、ルールを守っていれば何をしても良いという危険性を内在しています。

 たとえルールがなくとも、環境への負荷を最小限にし、持続可能に活用することが、日本の豊かな自然を世界に発信し、文化、言語、価値観の異なる人たちをわが国に迎えるために、世界中の人たちと共有すべき環境倫理になっていくのではないでしょうか。



野外教育者 岡村泰斗 茨城県つくば市

 【略歴】大学で野外教育の指導後、野外教育研修などを行う会社や指導者養成を支援する協会を設立。伊勢崎市出身。前橋高―筑波大大学院修了。博士(体育科学)。

2020/4/3掲載

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