正しい犬の室内飼い② 愛情と時間注ぐ「親」に
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 犬を庭で鎖につなぐことが禁じられているドイツでは正当な理由なしに室内でも動きを制限するのは論外だ。閉じ込められると苦痛であり、心身に悪影響を及ぼすからだ。まだ目も開いていない子犬や徘徊(はいかい)する老犬を飼い主が風呂に入る間だけ大きいサークルに入れることはあるし、車での移動時にゲージに入れることもある。どれも犬の身の安全を守るためであり、あくまでも一時的である。

 日本では論外どころか、ペットショップや訓練士にサークルまたはさらに狭いゲージに入れるように言われた、しつけの本に書いてあったと話してくれる飼い主も多かった。犬が序列を覚えるため、飼い主をリーダーとして認めさせるためだそうだが、狭い場所に閉じ込められた犬は不安を覚えることはあっても序列は覚えない。

 お手やお座り同様にゲージに入ることも教えられるが、犬は序列を覚えたからお手をするのではなく、褒めてもらえる、褒美をもらえる、飼い主が喜ぶ、またはやらないと怒られるからお手をする。ゲージに入るのも同じで、序列は全く関係ない。

 序列を覚えるどころか、日々ゲージに入れられている犬は足腰や背骨などに身体的な支障が出るだけではなく、そのストレスから胃潰瘍や片頭痛などを起こす。特に怖いのは脳への刺激が欠乏してしまうことで引き起こされる精神面での問題。食ふん、執拗(しつよう)に体をなめる行為、異常な吠(ほ)え、鬱(うつ)、分離不安。いわゆる精神病で、一度かかると治るまで時間がかかる。

 ゲージ自体が悪いものと言っているわけではない。災害時に必要になることもある。大事なのは教え方、使い方、そして犬の性格。ゲージに入っている時はそっとしてあげ、ドアを閉めたりしないことだ。正しく教えてあげるとゲージはくつろぎの場所になり、中で安心して寝たり、食べたり、来客時には隠れることができる犬にとって貴重な安全地帯になりえる。

 その他にゲージなどを使う理由として挙げられたのは留守中に悪さをしないように、飼い主が落ち着いて寝る、食事や料理などできるようになど。大事な点ばかりだが、閉じ込めなくてもできる。実際ゲージなど使用せずに犬と健全な共存生活を送っている飼い主はたくさんいる。

 落ち着いて食事がしたいからと言って親は幼児を部屋に閉じ込めたりせず、忍耐強く言葉をかけ、繰り返し教えていく。犬にも食卓から盗み食いをしない、調理中に飛びつかないなどを忍耐強く繰り返し教えてあげたらいいのだ。

 犬は人間が思っている以上に賢く、話しかければかけるほど言葉を理解し、感情も豊かである。そんな犬にとって飼い主は親のような存在だ。閉じ込めると言った手っ取り早い「解決策」に走らず、向き合って、愛情と時間をかけてあげてほしい。



ドッグトレーナー 西尾サビーネ 嬬恋村

 【略歴】嬬恋村でドッグラン「サビーネズドッグバケーション」を経営。ドイツの訓練学校を卒業後、現地で活動。2016年、同村に移住。ドイツ出身。

2020/04/06掲載

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