新型コロナと国際連携 今こそ中国との対話を
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 4月に予定されていた中国の習近平国家主席の国賓としての来日が延期された。新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)が武漢市に始まり、今も日本や世界が危機にひんしている中、妥当かつ当然の判断である。

 しかし、日本政府として中国とのハイレベルでの対話は常に閉ざすべきでない。「コロナ危機」が中国に始まったことにより「中国とは付き合うべきでない」といった声も聞こえるが、感情に流されず、むしろ中国との関係をいま一度、冷静かつ前向きに考え直す好機と捉えたい。

 今回の新型コロナウイルス発生段階において「中国人の日本入国を早期に禁止すべきだった」という指摘があるが、日本より早く厳しく中国からの入国禁止措置を課したアメリカが世界で最大の感染国となってしまった(3月末時点)。グローバル化した世界では感染症は短期間にたやすく国境や入国制限を超えパンデミックに至る、という現実は感染症対策がいかに難しいかを教えてくれる。

 感染拡大を防ぐ上での入国制限措置は必要であるものの、特定国との「2国間関係の遮断」が根本的な解決策ではない。むしろ日ごろから中国を含めた関係国との透明性の高い情報共有など、国際連携のさらなる強化こそが重要だ。

 筆者は2013年から18年まで中国に駐在した。地方都市の市場では、政府により禁止されたはずの野生動物が家畜・家禽(かきん)類と共に生きたまま同じ場所で売買されていた。多くの感染症は、コウモリに宿るウイルスが他の哺乳類を介して人間に感染したと言われる。新型コロナウイルス感染が終息しても、そのような環境を放置すれば、将来、新たな強毒性のウイルスが発生、拡散しかねない。

 今年2月、中国政府は野生動物の取引全面禁止を決定した。これを「中国の内政問題」で済ませることなく、日本も関与していくべきである。野生動物の市場取引の監視や感染症情報の早期共有、公衆衛生の啓蒙(けいもう)活動など、中国政府に強く求め、支援していくべき内容は多い。

 同様に、中国の大気汚染や土壌汚染問題も日本にとっても決して「対岸の火事」ではなく、より積極的な関与が望まれる。「中国との関係を遮断することが日本の国益」と言った考えは、現実から目を背けた無責任な主張と言わざるを得ないのである。

 過去の反日教育などを通じ日本に誤ったイメージを抱いていた中国人の中には、新型コロナウイルス感染拡大時に日本が中国に差し伸べた支援により、日本への認識を変えた人も少なくない。「好き」、「嫌い」といった国民感情的な関係を乗り越え、パンデミック終息後の世界課題を相互互恵的に解決・協働すべく、本音で議論できる「新たな日中関係」の再構築が求められている。



ジャルパック社長 江利川宗光 横浜市

 【略歴】1985年日本航空入社。執行役員人事本部長、中国地区総代表などを歴任し、2018年6月からジャルパック社長。前橋市出身。前橋高―東京外国語大卒。

2020/04/10掲載

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