体力・運動能力調査 低下自覚し不足補おう
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 今年も「体力・運動能力調査」の結果がスポーツ庁より公表された。2016年度の結果は、子どもと高齢者の運動能力の向上が鮮明だった一方で、30~40代は低下していることが明らかとなった。

 調査の目的は、「国民の体力・運動能力の現状を明らかにするとともに、体育・スポーツの指導と行政上の基礎資料を得る」こと。東京オリンピックが開催された1964年に始まり、98年からは60、70代も対象に加わった現行方式になっている。これら結果の長期的な推移から、体力・運動能力は65年頃から20年ほどの間は多くの項目で向上したが、その後は低下しながら推移してきたことがわかっている。近年、やや回復の兆しがみられるものの、ピークの85年頃に比べるとほとんどの項目が依然低い水準にある。

 体力・運動能力が向上していた時代に比べ、現代社会では電化製品は発達・進化を続け、掃除・洗濯といった家事での活動量は少なくなった。また交通機関も発達し、移動による活動量も少ない。数十年前に比べ、日常生活の中で長い距離を歩いて移動するような機会は明らかに減った。私たちが生きていくために必要とされる体力そのものが、以前より低くなっている。

 米国のある研究によれば、家事の機械化や交通機関の発達前後におけるエネルギー消費量の減少は、男性で1日140キロカロリー、女性で1日124キロカロリーだという。さらに、このエネルギー消費の減少と米国人の体重増加傾向は時期が一致しているとのこと。使われなくなったエネルギーは体脂肪として蓄えられたことが想像できる。

 体力要素の中でも特に持久力は、生活習慣病の危険因子や発症と関連があることが、すでに数多くの研究によって示されている。「体力・運動能力調査」では、シャトルラン(往復持久走)や急歩(いずれかの足が地面に着いていて急いで歩く)の項目で評価される。走る、歩くといった動きを持続する能力、いわゆる「ねばり強さ」である。

 便利な生活と引き換えに健康維持のために必要な運動量を失ったことを自覚する必要がある。次にその不足分を楽しみながら解消できる手段を手に入れておきたい。長時間労働が肯定されがちで“休み下手”な国民性もあって、いわゆる働き方改革には時間がかかりそうだが、個人の休みの使い方には今すぐ改善可能な部分があるかもしれない。

 手段はいくらでもあっていい。そのひとつとして登山をあげておきたい。群馬には多彩で奥が深い山がたくさんある。本格的な登山はもちろんのこと、まる一日かからずに登山でき、帰りは温泉につかり、直売所で新鮮な野菜を買うといった楽しみ方ができる。豊かなスポーツライフを実践するための「いろは」や注意点をこれからお伝えできればと思う。



日本山岳会群馬支部会員 大家千枝子 高崎市芝塚町

 【略歴】高崎健康福祉大准教授。専門は体育・スポーツ学。1990、91の両年に世界選手権自転車競技大会出場。東京都出身。日体大卒、日体大大学院修士課程修了。

2017/12/09掲載

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事