期待と準備 最期に着せたい服は何
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 縁起の悪い話と思わず、大切な人の物語をどう締めくくるかを考えると思って聞いてください。息を引き取った後に大切な人に着せたい服はありますか?

 期待と準備は別物です。まだまだ生きられると期待をしながらも、いま死んでも大丈夫なように準備をしておきましょう。地震や台風などの被害をできるだけ少なくするために、多くの人が防災訓練や準備をしたことがあると思います。地震や台風での被害は、人生で必ず来るというものではないにもかかわらずです。

 人は必ず死にます。それでも多くの人が考えることを避けています。「大切な人の死は考えたくない」。私もできれば考えたくない。でも準備をしないまま、いざそのときになって後悔している人をたくさん見てきました。いざというときのための備えは必要です。まずは息を引き取った後に着せたい服を考えてみませんか?

 好きだった服や気に入っていたパジャマとかでも大丈夫です。用意してなくても、病院では浴衣を用意しています。人によっては、葬儀は本人がもう決めていて、十二単(ひとえ)みたいなすごい着物を用意してあるなんて人もいます。

 葬儀前に家へ連れて帰りたいからとよく着ていた普段着だったり、孫が買ってくれたパジャマだったり。「ずっとオムツをしていたから、最後にパンツを履かせてあげたいです」とトランクスを家族から渡されたこともあります。

 入院中、ずっとディズニーのパジャマを着ていた患者さんがいました。家族に「ディズニーがお好きだったんですか」と聞くと、「ディズニーが好きというか、ディズニーランドに子どもたちと行くのがすごく好きだったから、少しでもその時の気分を味わえたらと思って」と言われました。意思疎通ができなくなっても、常に周りはディズニーのグッズであふれていました。だから亡くなった後もミニーちゃんのパジャマを着せて家に帰りました。

 好きだったことや物にも思い出が宿って、本人にとっては宝物ですし、ご家族にとっても何かしてあげられた気持ちになるものと思っています。看取(みと)りは、長い物語の終着駅であり総まとめです。最期に着る服は、象徴かもしれません。

 葬儀にはお金がかかります。大切な人が亡くなった直後は、冷静に物事が考えられない状態です。そんななか段取りを決めると、業者に言われるがまま、びっくりするぐらいの金額になってしまうということもあります。もともと付き合いのある葬儀社があるなら別ですが、一から探す時は少なくとも三つくらいの葬儀社から見積もりをとっておくことをお勧めします。

 期待と準備は別物です。まだまだ生きられると期待をしながら、死の準備をしておきましょう。



看取りコミュニケーション講師、看護師 後閑愛実 太田市内ケ島町

 【略歴】看取(みと)りコミュニケーション講師として2013年から研修や講演活動を行う。著書に「後悔しない死の迎え方」。埼玉県上尾市出身。群馬パース看護短大卒。

2020/04/27掲載

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