「経皮毒」から考える 人任せの選択はしない
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 私がバリ島に移住した数年後、娘の肌トラブルがきっかけとなり天然成分100%の化粧品を扱うインティバリ社を設立して数年がたった頃、日本では「経皮毒」なるモノが話題になっていました。あれから10年近くたった今も「出産の際に羊水からシャンプーの臭いがした」という「経皮毒」に関わる都市伝説的なうわさがネット上で物議を醸しています。

 この「経皮毒」とは、薬学博士の竹内久米司氏と稲津教久氏らの著書「経皮毒-皮膚からあなたの体は冒されている!」に書かれている造語で、「化粧品やシャンプーなどの日用品に含まれる合成化学物質(有害物質)が、皮膚から体内に吸収され、分解されることなく蓄積して健康を損なう」というものです。著書によれば、この経皮毒がアトピーなどのアレルギー性皮膚炎、免疫力低下、がん、脳疾患、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣嚢腫(のうしゅ)などの現代病を引き起こし、また胎児にも悪影響を及ぼす可能性があるとのこと。

 一方、ネット上では「経皮毒」に反論する声も少なからずあります。実際、「経皮毒」はあくまでも仮説であり化学的に証明されたわけではありません。「自然派」や「オーガニックコスメ」を扱う業者と結託してでっち上げたウソだと中傷する声まであるくらいです。

 ただ、環境問題に関心のある人たちや、肌トラブルを抱える人たちにとって、「経皮毒」は特に驚く仮説ではなく、むしろ既成事実として認識していると思うのですが、どうでしょうか? また、合成化学物質の有毒性や危険性が化学的に証明されているか否かということも重要視していないように思います。

 私は学生の頃に環境問題を学びました。特に興味深かったのが「水質汚染と合成化学物質の関係」について。近年、魚介類の生態異常が世界中で報告されているのですが、その原因は、「家庭から自然界に排出される洗剤やシャンプーに含まれる合成化学物質(有害物質)が、他の有毒物質と結びついて毒性を増し、自然界に異常をきたしている(複合汚染)」という見方が強く、複雑化した私たちの生活環境において、さまざまな要因が複合的に作用した結果、化学的に原因を特定することが難しくなってしまったのです。

 このような生活環境において、化学的に実証されたことだけが真実とする考えは危険です。私たちにとっては、化学的に証明されてからでは遅いこともあると思うのです。個々においては有毒性が認められない合成化学物質でも、他の物質と結びついて毒性を増すという疑いがある以上、疑わしきモノはできるだけ避けることが最善の選択に思えます。良いと言われていたことが実は悪かったということが起こり得るのです。何を選ぶか人任せにすることはできません。



化粧品輸入販売会社「PRIORITAS」社長 岡柳慶 みどり市笠懸町鹿

 【略歴】2000年にバリ島へ移住し、16年5月に化粧品輸入販売会社をみどり市で創業。東京都出身。桜美林高卒業後、米ニューヨーク市立大で環境問題を学ぶ。

2017/12/12掲載

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