子と家庭のために 「助けて」と言える勇気
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 「(新型コロナウイルスの影響による)休校と外出自粛要請で、おうちで虐待を受けている子はどうしているのだろうね」と、彼女に問うと「やばいね」と、一瞬にして顔を曇らせた。

 彼女も長年、親の暴力を受け続けてきた。人前でも殴られ、親の友人からも怒られ、大人は信用できなかった、自分からは怖くて助けを求められなかったと振り返った。打ち明けることで母親が悪くなってしまうこと、自分自身も人からかわいそうと思われることが嫌だったという。

 「警察にはお世話にならない」「人に迷惑をかけるな」と親に言われたことも、彼女たちの勇気を阻んでいる。

 助けを求める選択肢に児童相談所が入っていなかったことに驚いたが、納得もできた。命の危険にさらされている子にとって、どんな所か分からない場所に助けを求めることはない。彼女は一時保護所の存在を知っていたら早く助けを求められたかもしれないという。

 一時保護所とは児童相談所に付設した施設で、保護が必要な子どもを一時的に保護するための施設である。県内では太田市の東部児童相談所に今春新設され、前橋市の中央児童相談所と合わせ、2カ所設置されている。ご飯もおいしく楽しい所だと利用した子はいう。寂しさや悲しみ、恐怖や不安でいっぱいな子どもにとって、まずホッとでき、安全が守られる最初の場所がこの一時保護所である。

 スクールカウンセラーの存在や、電話・メールでSOSを出す手段が子どもたちに周知されるようになったが、親の目が光る家庭からの発信は命がけだ。ちょうど1年前、7歳男児が夜道を歩いて、「お父さんに虐待されている、助けて」と交番に駆け込んだ事件を思い出した。親であっても暴力はいけない。そう学ぶ機会が身近にあることが勇気を出す一歩につながる。ぜひ児童相談所と連携し、学校教育の中で学ばせてあげてほしいことの一つだ。

 一方、親の育児ストレスも深刻だ。「本当に手に負えなかった」「家族だけでは限界だった」と明かす。そんな時は、子どもとも相談して、預けることも悪いことではない。先日、県内の児童相談所のケースワーカーと話をした。休校と自粛要請で虐待相談の増加が見込まれるが、家庭の状況が安定していると感じることもあるという。時間に追われず怒ることも減ったのではないかと分析していた。

 私たちも長期の休みごとに感じることがある。子どもの表情がとても柔らかく、のびのび落ち着いていることだ。親子関係と、子どもの健やかな成長に学校の存在も大きい。5月5日はこどもの日だった。5日から1週間は、子どもや家庭、子どもたちの健やかな成長と幸福を国民全体で考える児童福祉週間。暖かなやさしい風を吹かせよう。



ファミリーホーム「循環の森やまの家」代表 宮子宏江 前橋市富士見町引田

 【略歴】前橋市の児童養護施設「鐘の鳴る丘少年の家」に勤務した後、2017年6月にファミリーホーム「循環の森やまの家」を立ち上げる。伊勢崎市出身。

2020/05/21掲載

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