豊かさの定義とは 異なる価値観を大事に
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 皆さんにとって、豊かさとは何でしょうか。優雅な暮らしを送ることでしょうか。豊かな自然の中で過ごすことでしょうか。大勢の家族と共に過ごすことでしょうか。高層マンションから毎晩都市の夜景を眺めることでしょうか。そして、この問いに正解はあるでしょうか。また、人それぞれ異なる定義であるはずの豊かさを比較することはできるでしょうか。

 同じことが日本の自治体にも言えます。日本には現在1700あまりの自治体があります。現在の日本では、各自治体において使用する言語や食文化にあまり大きな違いはありませんが、歴史、伝統、産業など、同じ国にありながらも異なる文化やルーツを持つ地域は多数あります。そのようなてんでんバラバラな日本において、全国共通の豊かさの定義を作ることはできるでしょうか。

 視覚的にわかりやすい豊かさの定義が、お金や数値を用いた評価です。県内総生産額を見ていきましょう。これは、県内にある事業所の生産活動によって生み出された生産物の総額から原材料費や光熱費などを引いた額です。最上位は東京都で104兆円あまり。一方、群馬県は8兆5千億円ほどです(2016年度)。果たしてこのデータのみで豊かさを定義し比較できるでしょうか。

 群馬は東京に比べて県内総生産額は低いですし、最低賃金も安いです。一見群馬が劣っている印象を持つこれらの数値ですが、それは無意識のうちに都会の価値観を田舎に当てはめている結果かもしれません。お金だけで豊かさを定義できませんし、田舎ならではの人付き合いで財布を開かずに物が動くこともあります。都会には都会の、田舎には田舎の価値観があり、それらを互いに押し付け合って比較する必要はありません。

 日本では高度経済成長期と、その後に訪れたバブル期の2度にわたって、三大都市圏に人口が多く流入する時代がありました。これらの時代に仕事やお金を求めて人口が集中した結果、日本は世界的にも珍しいほどの地域による人口の偏りが大きい国となりました。日本全体の人口が減少に転じた今もなお、地方から都市部、特に東京へ人口が流入する動きは続いています。

 しかしながら近年、度重なる災害やウイルス対策などの観点で、人口密度が高いことのリスクが広まり、また仕事の場所を選ばない働き方も増え、田舎への注目度が高まっています。やっと田舎に人が戻ってくる時代が来ました。本来人間は食料や産業のある場所を求めて動き回る生き物です。東京への人口流出に過度に焦らず、悲観的になることもなく、今ある魅力をたっぷり感じて地道な発信を続けていれば、やがて田舎に人が戻り日本全体が均整化される、そう信じたいものです。



なんもく大学事務局長 古川拓 横浜市戸塚区

 【略歴】2015年以降、横浜市から南牧村に70回以上通う。トラック運転手などの仕事をしながら、なんもく大学を運営。全都道府県を訪問。同市出身。慶応大卒。

2020/5/23掲載

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