犬本来の姿 多頭飼いが心を満たす
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 トレーニングやドッグランでよく「犬は1匹で飼うより2匹の方がいいのか」と聞かれる。答えはイエス。犬はとても社会性が高く、群れで生きるのが自然な姿だ。だから1匹より、2匹またはそれ以上で飼うのが理想的だ。人間しか与えられないものがあるように、犬同士でしか満たせないものもある。遊びや寄り添い方、犬が犬から学ぶものなどが挙げられる。

 だが、多頭飼いは餌や医療費など頭数分の金銭面の負担、時間や手間も増える。例えば散歩。全頭同時に行けたらいいが、けがをしている犬や子犬、老犬がいるとしたら、ほかの犬より歩ける距離が短かったり、速度が遅かったりするから個別散歩が必要になる。

 子どもが好きな犬と苦手な犬が一緒に暮らしていると、一緒に散歩に行く際はそれぞれの犬が楽しめるように気も頭も使わないといけない。個々の性格や年齢、体格や体調に合わせた生活を与えてあげないといけないので、多頭飼いでは飼い主のマネジメント能力が1匹の時以上に問われる。

 失敗しない多頭飼いのために新しい犬を迎え入れる前のポイントをいくつか書いてみた。家族会議で全員が多頭飼いに賛成であるか確認しよう。先住犬や猫たちの意見も必ず聞こう。ごくまれだが1匹の方が幸せな犬もいれば、犬より猫が好きな犬もいる。持病持ちの老犬なら「もう俺だけに集中してくれ」と願うかもしれない。そして迎え入れようとしている犬にとってもいい話なのかをしっかりと考えよう。

 相性が悪い犬同士だと楽しいはずの多頭飼いは苦痛になる。必ず「身体的相性」と「精神的相性」が合うように心掛けよう。同じ生後6カ月の子犬でも2キロのチワワと50キロの秋田犬では体格に雲泥の差がある。さらに1歳同士でもチワワはすでに大人だが秋田犬はまだティーンエージャーと、精神年齢の成長速度も全く違う。このチワワにとっては遊び盛りの秋田ビッグベビーはうっとうしい、下手したら恐怖を感じる存在になる可能性が高く、そうなると完全なミスマッチだ。

 万が一、愛犬たちの相性がいまひとつ良くないと感じているなら多頭飼いに詳しいトレーナーに相談して、改善できる方法を探そう。

 大変なことが多い多頭飼いになぜ多くの飼い主は夢中になるのか。私は多頭飼いを満喫している愛犬たちを見ると苦労が全て吹き飛ぶ。留守番が苦手だった犬がへっちゃらになり、虐待歴があり、庭に出ることもおびえていた犬がほかの子に促されて今では「散歩に行こうよー」と私を誘うのを見ると多頭飼いのすごさと必要性を感じる。庭で遊んでいたと思いきや部屋で無防備に隣り合わせに寝ているみんなの姿は私の心を幸せでいっぱいにする。これが犬本来の姿なのだ。



ドッグトレーナー 西尾サビーネ 嬬恋村

 【略歴】嬬恋村でドッグラン「サビーネズドッグバケーション」を経営。ドイツの訓練学校を卒業後、現地で活動。2016年、同村に移住。ドイツ出身。

2020/06/01掲載

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