外来生物の侵入・定着 人間の経済活動が一因
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 現在、数多くの外来生物が国内に定着しています。2年ほど前には南米原産のヒアリが国内で見つかり、ニュースで取り上げられていました。ヒアリは腹部に針を持ち、刺されると火傷のように痛むことから英語名のファイヤーアントを訳してヒアリ(火蟻(あり))と呼ばれています。

 また、カミキリムシの一種であるクビアカツヤカミキリは数年前から関東地方を中心に増えています。本種はサクラやウメなどのバラ科樹木に産卵し、孵化(ふか)した幼虫がその樹木の中を食べて成長して枯らしてしまうことがあるため、各地で駆除などの対策がとられています。この他にも、北米から持ち込まれたブタクサハムシやアワダチソウグンバイなど、数多くの外来昆虫が侵入・定着しています。

 これらの外来生物は、主に輸入品などの物資に付いて持ち込まれたと推測されており、人間の経済活動が外来生物を増やした一因と言えます。

 昨年、ムネアカハラビロカマキリという外来種のカマキリが県内でも確認されました。このカマキリは卵の付いた竹ぼうきが中国から輸入されて持ち込まれたと推定されています。日本には在来種のハラビロカマキリという近縁種がいますが、ムネアカハラビロカマキリが増えた地域では、在来種のハラビロカマキリが減少しているという観察例が報告されています。

 このように外来種の中には直接人間に被害を与えるわけではありませんが、在来種と競合し生態系に害を及ぼすものもいます。

 外国産のカブトムシやクワガタムシは子どもたちを中心に人気があり、今ではホームセンターなどでも生きた外国産カブトムシなどが販売されています。このように流通が広がったことにより、しばしば野外で外国産カブトムシやクワガタムシが見つかる事例が増えています。

 外国産の種類には在来種より大きくて力が強く、凶暴で繁殖力が高いものもいます。このような種類が定着すると在来種のカブトムシやクワガタムシをはじめ、生態的に競合する昆虫が追いやられて生息できなくなる恐れがあります。

 最近では遺伝子を調べることにより、各地域で固有の遺伝子を持ち、同じ種でも地域によって遺伝的に異なることが判明しています。国内でも本来生息していない地域の生物を持ち込んで放したり、同じ種類でも遠い地域の個体を別の地域に放すことは生態系や遺伝的な多様性を破壊することになります。

 このような生物を国内外来種と呼びます。飼育されているオオクワガタなどもこのような国内外来種になる可能性が高い種類です。昆虫に限らず、飼育している動物をむやみに放すことは自然破壊にもつながることを知ってほしいと思います。



県立ぐんま昆虫の森昆虫専門員 金杉隆雄 前橋市上新田町

 【略歴】2005年の開園時から現職。県尾瀬保護専門委員、前橋市自然環境保全推進委員。専門は昆虫分類学と衛生昆虫学。藤岡市出身。帯広畜産大大学院修了。

2020/6/2掲載

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