あたたかい入学式 娘が教える「命の形」
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 4月7日、県内の小学校の多くで入学式があった。伊勢崎の市立小中学校は、市内の新型コロナウイルス感染状況により、急きょ9日に変更になった。7日夜、亡くなった長女の神徒壇の横にかわいらしい白とピンクの洋服がかかっていた。仕事から帰宅し、それを見つけた私に、入学の年を迎えた娘のために買ってきたと主人が話す。涙があふれ、何日か前のことを思い出した。

 4月2日。前回の原稿で書いたPTA本部役員会議があった。本年度から本校に着任された校長先生との初対面…ではなかった。校長先生から「中林さん!」と第一声を聞き、驚きと再会のうれしさで、やや気持ちが高揚している自分がいたのだった。

 娘のための洋服を見て「生きていたら今年入学式。きちんとお祝いをしたい」と思った。コロナウイルス感染症の影響で入学式は簡素化され、PTA役員としても出席できるか分からなかった。

 会長に事情を話し、その上で校長先生にお願いに行くことにした。数年前、校長先生と関わらせていただいた時に娘の話をしたことがあった。小さく小さく産まれて、障害があること、医療的ケアが必要なこと、「生きる」ことを頑張っていること…。天使になったことも伝えてあった。

 母としてのわがままを、失礼を承知で口にした。「入学式が終わったら、娘のランドセルと一緒に写真を撮ってもらえませんか」。「いいですよ」。二つ返事でいただけた答えに、きっと校長先生との再会は、娘のはからいもあったのかもしれないと思った。

 式当日。暖かい春の日差しを受け、入学式が挙行された。いすに腰かけ、足をぶらぶらさせる1年生。大変な世間の中でも無邪気な子どもたちの笑顔が大人をほっとさせてくれた。

 入学式が終わり、静かになった会場に校長先生をはじめ、先生方が残っていてくださった。「入学おめでとう」の文字と、ピカピカのランドセルと入学式用の洋服。校旗とお花。校長先生をはじめとする先生方。娘の写真を抱いて記念写真。あたたかい涙でいっぱいの時間だった。

 撮った写真を、娘が生前お世話になった方々や、わが子を亡くした同じ経験のある天使ちゃんママたちにも見てもらうことができた。娘は天使になった今でも人々にあたたかくて優しい気持ちや、元気を与えている。単純に母として「すごい」と思う。娘の影響や娘が与えてくれるご縁・役目は、どれも私にとってかけがえのないものだ。

 「命」はどんな形でも大切な命。人生が幸せかどうかは、長さではなく、濃さで決まるのだと娘が教えてくれた。一日一日を大切に、そして悔いなく生きていきたい。何十年か後、娘に会えたらほめてもらえるように。



NPO法人生涯発達ケアセンターさんれんぷ代表 中林亜衣 伊勢崎市茂呂町

 【略歴】認定音楽療法士、相談支援専門員などの資格を持つ。医療的ケア児等コーディネーター、県重症心身障害児者を守る会理事。東邦音楽大音楽療法専攻卒。

2020/06/03掲載

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