子の反抗期 適切な加減で見守って
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 育児に携わる者は、一度は反抗期という洗礼を受ける。とりわけ思春期は爆発的なエネルギーをパッと放つため、それに反応して大人の感情も大きく揺さぶられる。

 児童養護施設などの新任職員は、20歳そこそこでこの洗礼をいち早く受けることになる。巻き込まれないで適切な援助ができるよう、研修を重ね、子どもに対応していく。

 思春期の子どもは抑圧した分だけ、エネルギーを爆発する。その子に選ばれた職員がその受け皿になるが、若い職員に限らず経験を積んだ者でも、強いエネルギーにストレスを受け、自分を壊してしまうことも多い。

 私にも新任時代があった。宿直の日、ノックされた扉を開けると、担当していた中学2年生の男の子が立っていた。「金を出せ」と包丁を持っている。電車で家に帰る資金だという主張だ。彼はだいぶ荒れていて、ドラマで見るような家庭内暴力が日常茶飯事であった。私よりも背が高くガッチリで、腫れ物に触らないようビクビクしながら仕事をしていた。

 そして10年以上たったある日、大人になった彼が突然やって来て、「先生には世話になったよ」と言ったのだ。私と彼に気持ちのズレがあったことに驚いた。

 思春期は反発しながらもケロッと普通に話しかけてくる。関係が悪くなってしまうのは、その態度に大人の気持ちの切り替えが追い付かないからだ。大人にも弱さや反抗心というものがあって、いつまでも引きずっていると関係は悪化していく。まだまだ大人のサポートが必要なのだと、寛容な心でパッと切り替えてしまった方が互いに気分はいい。子どもとうまくいかないことほどつらいものはない。

 思春期は一つ解決しても次から次へと訴えや不平不満が出てくる。特に一番身近な生活権を握った大人が対象になり、その役を買うことになる。「いいかげんにしなさい」と言いたくなるが、子ども自身も感情の起伏の激しさを自覚し苦しんでいるのだ。

 「なんか分からないけどイライラするんだよ」と本人が言うように、理由の分からない何かが感情を起こさせ、癇(かん)にさわるのが思春期だ。この理由なきイライラは何かといえば、発散しきれない過剰なエネルギーだ。ふてくされたり、怒ったり泣いたり、爆発することによってエネルギーを分散している。それはバランスを取ろうとする自然な姿である。

 他の分散方法として、スポーツもお薦めだ。

 この時期を誰もが必ず通って大人になっていく。反抗期は順調に成長している証しだ。大人は自分の気が済むまでしかったり、必要以上に気を使いすぎたりもせず、その子にとっての適切な加減で、この時期を見守り導いてあげたいものだ。



ファミリーホーム「循環の森やまの家」代表 宮子宏江 前橋市富士見町引田

 【略歴】前橋市の児童養護施設「鐘の鳴る丘少年の家」に勤務した後、2017年6月にファミリーホーム「循環の森やまの家」を立ち上げる。伊勢崎市出身。

2020/07/10掲載

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