アウトドア再開 コロナが問う進化の形
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 新型コロナウイルス感染が首都圏を中心になかなか収まりません。一方でアウトドア事業も再開され始め、群馬県の事業者の方も緊張状態が続いているのではないでしょうか。7月中旬の社会状況を基に、アウトドア事業再開に関する所感を述べます。

 緊急事態宣言解除後、各種アウトドア業界団体のガイドラインの作成に関わってきました。その中には、活動中にマスクをつけたり、参加者同士の距離を保ったり、アウトドア活動中には到底考えにくい基準が示されています。ビジターには、これらの安全対策をPRするものの、現実的にできるはずはないので、濃厚接触が起こっている事例も発生しています。

 私が主催するキャンプ団体では、保護者との契約が、子どもにアウトドア体験を提供することではありません。アウトドア体験を通じた教育効果です。その契約を果たすために、濃厚接触となる共同生活や、マスクを外した野外活動を欠くことはできません。つまり、マスクとフィジカルディスタンスが必要なキャンプであれば、リスクを冒してやる意味がないのです。

 では、どうしているのか。一つはキャンプの前後1週間、参加者とそのご家族に感染リスクのある活動を控え、自己検疫をしてもらいます。また、キャンプ前2週間に居住地の近隣市区町村で市中感染が起こった場合には、参加を見合わせてもらいます。

 普通こんな厳しい制限のあるキャンプに子どもを参加させません。それでも今年も順調に参加者が集まり、開催します。つまり、この負担を受け入れてでも、それを超える対価が期待されるからです。

 このような処置をとっても、感染リスクはゼロとは言えません。教育効果を損なわないよう、キャンプ中も感染対策をとります。例えば、野外炊事をやる流し場は水をくむだけで、自分のテントサイトで調理、たき火、片付けの全てをします。登山中であれば当たり前の食事の風景です。

 また、公共スペースを消毒しません。消毒した後に誰かが触ったら全く意味がないからです。トイレ、流し場などに出入りする時に持参した消毒薬で消毒します。こちらも登山の食事作りやトイレの後の当たり前のマナーですね。

 新型コロナによって、アウトドア事業は大きな転機を迎えます。都市の生活を持ち込むことによって快適性を提供してきましたが、ウイルスを相手に都市の基準ではほとんど役に立ちません。また、感染予防を目的とするのではなく、事業の目的を達成するために、どのような感染緩和策が必要となるのか、それを考えるためにはどうしたら目的を達成できるかと言ったロジックが必要になります。

 普段の生活を律してでも参加したい体験を提供できるのか、アウトドア産業の進化が求められる時です。



野外教育者 岡村泰斗 茨城県つくば市

 【略歴】大学で野外教育の指導後、野外教育研修などを行う会社や指導者養成を支援する協会を設立。伊勢崎市出身。前橋高―筑波大大学院修了。博士(体育科学)。

2020/07/30掲載

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