経験、人脈、見識アリ シニアを地方へ招致
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 7月上旬、富山県氷見市と新潟県上越市の2市を旅してきた。コロナ禍が続く中ではあるが、還暦を迎えた自分と同年代の親友2人が、見ず知らずの土地で第二の人生をスタートさせた姿をどうしても見たかった。

 氷見市副市長の篠田伸二君は元TBSテレビのプロデューサー。副市長の公募に合格して今年4月に着任した。越後トキめき鉄道社長の鳥塚亮君は外資系航空会社勤務、千葉県のいすみ鉄道社長を経て、昨年9月やはり公募にて同社社長に就任した。59歳にして、新天地で地方創生という新たな挑戦をスタートさせた2人の姿は、私の目にまぶしく映った。

 先の国会で高年齢者雇用安定法が改正され、企業は段階的に70歳までの就業機会の提供を求められることになる。社会保障制度を将来にわたり維持するために必要な措置ではあるが、多くの人にとって60歳以降も同じ会社に再雇用で残るだけが選択肢だとしたら、もったいない話である。

 都会の企業でキャリアを積んだ60代が、地方創生に第二の人生をかけることは本人、地方双方にとってメリットがあり、既に多くの事例もある。今回の法改正を機にさらに促進していくべきである。

 心身ともに健康で意欲があれば60歳でも新たな職務に十分トライできるし、経験、人脈、見識等、若い世代にはない素養を持つ人も多い。雇用する地方側にとっても、子育てが終わったシニア世代であれば報酬や雇用条件が東京レベルより大幅に低くても、地方で得難い人材を確保できる可能性とメリットがある。

 コロナ禍と働き方改革により、大都市圏の高キャリア人材を地方が採用できるチャンスは増えていく。密集した都会生活を避け、テレワークで働くことを前提に地方へ移住する流れが加速することに加え、その「逆パターン」も人材確保に活用できるからである。

 過去、首都圏のシニア人材が、地方での再就職に関心を持っても、親の介護等の問題を抱える中では、転居を伴うために転身を諦めてしまうケースも多かった。首都圏の自宅に居住したまま、群馬県の企業や団体と雇用契約を結び、自宅でのテレワークと週1日程度の群馬県内の職場への出勤を組み合わせた柔軟な働き方を認めれば、転居は不要となり、優秀なシニア人材の確保ができる。

 東京との距離や交通の利便性を考えると、群馬県にとって現実的かつ優位性のある話であり、官民一体となって環境整備とモデル作りに取り組んでみてはどうだろうか。

 歌手の郷ひろみさんが近著『黄金の60代』の中で語っていた。「60代を人生最高の時期と考え、あれこれ準備を整えてきた。だから、僕の成功は60代から始まる」。まさに今、個人や企業、社会が耳を傾けるべき言葉であろう。



ジャルパック社長 江利川宗光 横浜市

 【略歴】1985年日本航空入社。執行役員人事本部長、中国地区総代表などを歴任し、2018年6月からジャルパック社長。前橋市出身。前橋高―東京外国語大卒。

2020/08/01掲載

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