日本酒とワインを少々 醸造の裾野を広げたい
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 今年はコロナ禍に翻弄(ほんろう)されました。楽しみにしているランニングイベントもほとんどが中止となりました。それ以上に残念だったのが各地の蔵開きや酒まつりイベントの取りやめでした。年明け早々に会津若松へ買い出しに行っておいたのは幸いでした。

 大学時代、コンパでのアルコールの洗礼の影響もあり、日本酒は好んで飲みたいものではありませんでしたが、社会人になって地元の上岡酒店さんに通ううちに奥深さを知ることができました。蔵元の創意工夫や各地方公設試験研究機関のバックアップに加え、流通保管に配慮した良心的な酒販店の増加、純米などの特定名称酒の充実もあり選ぶ楽しみが増えました。

 息子の山梨への転勤を機にワインもかじってみますが、1980年代に一升瓶ワインブームの洗礼を受けた身としては湯飲み茶わんで飲む葡萄(ぶどう)酒が嗜好(しこう)に合うレベル。日本ワインブームの今こそワインの良さを理解できればと思います。

 50年頃までは節米という言葉が一般的だったそうで、貴重な米を酒造りに回せば主食が脅かされるという理由で19世紀末からワイン醸造への挑戦が始まったそうです。ワインは出来上がったものの当時は甘味を付加した甘味ワインが主流で本格的なワインは市場を得られませんでした。

 さらに世界に蔓延(まんえん)したフィロキセラというワイン用ブドウに特有の病害虫の壊滅的な影響も受け、日本で本格的なワインを醸造・常飲する機会を逸したのです。

 2018年にワインラベルに「日本ワイン」の表示が可能になったこともあり、日本ワインブームが訪れました。ワイン用ブドウ苗の供給が間に合わない状況です。ワイナリーが増える理由に酒類製造免許の得やすさもあるようです。免許なしでもブドウ農家が製造工程を委託するカスタム・クラッシュに代表される製造の多様性がワインの広がりに寄与しています。

 一方、日本酒の免許の新規取得は難しく事実上新規参入は不可能とされています。昨年、輸出を目的にする場合に限り日本酒醸造の新規参入が可能となる法改正がありました。国内向けの免許についても規制緩和を期待したいところです。

 ブドウよりも芋、芋よりも米や麦の貯蔵性が優れることからもわかるようにワインは農産物に一番近い酒といわれます。その土地柄を生かした6次産業化を目指し、さらにはワインツーリズムの創出に取り組む例も増えています。

 おいしい日本酒を飲めば「自分でも醸造してみたい」と思う人、酒米作りから製造販売まで6次産業化に取り組みたい方も多いのではないでしょうか。母屋を取られることはないと思いますので軒を貸して裾野を広げることも大切ではないでしょうか。



正田醤油発酵研究所所長 笠原貢 栃木県佐野市

 【略歴】正田醤油館林工場長を経て、2007年から現職。日本醤油協会「しょうゆもの知り博士」。専門は応用微生物学、醸造学。藤岡市出身。高崎高―岩手大卒。

2020/08/03掲載

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