高専での11年 開発スタッフに恵まれ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 高等教育機関である高専は同時に、研究機関としての役割も担っており、外部の企業等からの技術相談や委託開発業務などを担うこともある。高専教員に課せられる業務は多様で「技術者」「研究者」「教育者」としての三様の面を持つことがある。どの分野に主を置くかは、各高専教員のキャリアやインセンティブ、価値観により大きく異なる。群馬高専に着任してから11年が経過し、群馬高専での勤務年数は、重工メーカーでの勤務年数を超えつつある。

 技術者らしさ、教育者らしさ、研究者らしさとは何か、顧みることがある。群馬高専に着任するにあたり、技術者として直接的に宇宙開発に関わることはもうないだろうと思っていた。教育者としてこれまで得た知識や経験、意志を伝えたり、研究者として自分の研究してみたい課題について自由闊達(かったつ)に取り組むことが教員としての業務と考えていた。そんな折、ある先生方との出会いがあった。

 遠く離れた他高専の先生から、「高専宇宙連携」へのお誘いをいただいた。高専宇宙連携の教員は、誰もみな、宇宙開発への夢を熱く語る方々ばかりで、公募型のさまざまなプロジェクトに果敢に挑戦する集団でもあった。

 当時、超小型衛星を高専宇宙連携で開発することは資金面、技術面、体制面などの観点からいささか困難な状況にあった。にもかかわらず、革新的技術実証衛星2号機の打ち上げプロジェクトへの応募に誘われた。その結果、当プロジェクトに採択され、資金面、技術面、体制面などを克服しつつ、現在に至る。

 厳格な仕様や規格に従って遂行されるメーカーでの宇宙開発と違い、この衛星開発プロジェクトでは、ミッションや機能、技術開発などのさまざまな要素を自分たちで提唱し、自分たちの開発ペースで、気の合ったスタッフに囲まれながら、開発ができる環境下にある。

 また、プロジェクトに対する自分の役割や貢献度を計り知ることが容易であり、意外にも企業にいた頃よりも、今のプロジェクトの方が宇宙開発への参画の実感を持つことができる。打ち上げ後の達成感も大きそうだ。

 毎年、楽しみにしていることがある。卒業研究のための学生の研究室配属である。才能を持ち合わせた学生との出会いがあり、優秀な学生と共に切磋琢磨(せっさたくま)し、学びあえる喜びがある。教育とは、知識を一方的に伝えるものではなく、共に学び、共感することなのかもしれない。

 私にとっての衛星開発とは、この年になってもまだなお、毎日、新しく知る学びがあり、衛星開発を通じて教育を受けているのは自分自身なのかもしれない。まだまだ、学びの途中である。年を重ねても孔子の論語のようには、いかないものである。



群馬高専機械工学科教授 平社信人 高崎市日光町    

 【略歴】石川島播磨重工業、IHIエアロスペースを経て、2009年に群馬高専へ。20年から現職。愛知県出身。東京工業大大学院博士後期課程修了。博士(工学)。

2020/08/15掲載

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事