消費期限を延ばす MAPで食品ロス削減
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 食品の包装技術にMAP(ガス置換包装)という方法があります。専用のプラスチックトレーに食品を入れ、容器内の空気を除去し、その代わりに二酸化炭素ガス、酸素ガス、窒素ガスを単独あるいは混合して容器内に封入した後、ふたシールで密封する方法です。これにより食品の鮮度が維持し、日持ちも向上して流通・販売されます。

 MAPされた商品はコンビニエンスストアやスーパーマーケットで一般的に販売されています。特に前者で種類が多いでしょう。例えば、よく目にする商品としてはチルド棚にある惣菜(そうざい)類が多く、ベーコン、ソーセージ、磯部揚げ、カニカマ、焼き魚(ふたシールに魚の写真が印刷してある)などがあります。

 MAPの歴史は古く、日本では1990年代に食肉や水産加工食品で検討されましたが、容器コストが高く、それほどの広がりを見せませんでした。しかし最近、国内ではMAPにより食品の消費期限を延ばし、世界中で問題となっている食品ロスを低減させる動きが広がってきました。

 店舗のバックヤードにおける人手不足解消の観点からも、MAPが脚光を浴びています。センターでMAPを集約して行うことで、作業が効率化できるからです。さらには、従来のふた部分がシールに替わるため、プラスチックも大幅に減少させることが可能です。

 私の研究室では、5年前からMAPに関する研究を行っています。食肉では牛肉、豚肉、鶏肉、惣菜類ではハンバーグ、ローストビーフ、筑前煮、きんぴらごぼう、サラダ等への適用を検討してきました。

 その結果、食品の種類によっても異なりますが、品質や鮮度を維持しながら、従来の消費期限をおおむね2日延ばせることが分かってきました。

 実は、日本の行政指導では二酸化炭素ガス等を用いたMAPが認められておらず、MAPが一般的なEU諸国や米国とは異なった状況にあります。その理由とされているのが、過去に一部の業者が行った「一酸化炭素ガス」の鮮魚への使用です。使用によって鮮魚は鮮やかな色を維持しました。これが、鮮度に関して消費者の誤認を招く恐れにつながるとされ、使用が禁止されたことに端を発しているのです。

 しかしながら、前述の通り、MAPは最近の食品業界で既成事実として大きな広がりを見せており、もはや消費者の食生活には欠かせないものになっています。現在日本では、食品産業の分野でも国際的な調和(ハーモナイゼーション)が進行しています。食品包装でも同様に調和が進み、MAPが正式に認可され、食品ロス削減、人手不足解消、プラスチック削減等に寄与することを期待しています。



東洋大食環境科学部教授 佐藤順 埼玉県新座市

 【略歴】食品会社で微生物検査や管理、品質保証などの業務に長らく携わる。2013年から現職。県食品安全県民会議委員。宮城県出身。東北大農学部卒。

2020/08/16掲載

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