「社会を彫刻する」 誰もが持つアートの力
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 「見えないものを可視化する」をコンセプトにNPO法人インビジブルを運営しています。アートの力を活用したコミュニティー開発、教育などの領域をまたいだプロジェクトに取り組み、時代や状況に合ったカタチで、アートが当たり前に日常の一部として捉えられる必要性を信じ、持続可能な豊かな社会をつくることを目指しています。

 アートは、想像力をかき立て、当たり前に感じられる文化や日常に対峙(たいじ)し、あえて違った視点で物事を考える機会を生み出します。また、そこから新たな価値観を創出する力があるからこそ、世の中が抱える課題解決の糸口を見つける触媒、きっかけ、策になり得ると痛感するのです。

 この考えの源流には、アーティストの定義が時代ごとに変容・多様化していることに加え、そもそも「概念藝術(げいじゅつ)」というアイデアや発想自体がアートである考え方があります。特にヨーゼフ・ボイスは、アーティストとは「自ら考え、行動する人」と説き、全ての人が役割をもち、行動することで、社会をつくる・変える(彫刻する)と考えました。それを「社会彫刻(Social Sculpture)」と呼び、私は、アーティストとしてのあり方、プロジェクトを展開する上で多大な影響を受けています。

 材料(メディア)を「社会」と置き換え、「彫刻」という物質的なものを作り上げる言葉を、比喩的に捉えることで、新たな考えや問いへと結びつけています。特別な人のみがアートに触れ・営むのではなく、誰しもが備えている能力や役割に意識・誇りを持ち、生活・行動することで、よりよい社会を創成することができるということです。私は、今こそ、この「社会彫刻」という言葉を単なるアートの概念と捉えず、何を意味しているのかを誰もが再考する必要があると思っています。

 今年、高崎問屋団地完成50周年記念の一環としてスタートした「問ひ屋プロジェクト」も、このような考えを応用しながら進めています。街の人とアーティストが掛け合うこその発想で、歴史的な文脈を継承しつつ、問ひ屋だけに「問う」行為が交流・対話のきっかけとなり、新たな展望を探求するスペース「問ひ屋ラボ」を軸にしたアートプロジェクトを展開しています。

 意志を持ち行動し、社会を彫刻することもアートであると考えたとき、読者の皆さん含む全ての人がアーティストになりうるのです。そんな気持ち、視点から日々の生活をみた時、きっとそこには自分自身しかできないアートが存在するはずです。最後になりますが、本来、アートを生み出す源泉である創造性・想像力は誰もが持っているとても平等な能力だと私はいつも思っています。

 「社会を彫刻する」。あなただったらこの言葉をどう捉えますか?



NPO法人インビジブル クリエイティブ・ディレクター菊池宏子 東京都渋谷区

 【略歴】アーティストの立場からアートプロジェクト企画運営や地域再生事業を国内外で展開。米ボストン大芸術学部彫刻科卒、米タフツ大大学院博士前期課程修了。

2017/12/24掲載

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