関係人口の新傾向 共助へ、愉快で多様に
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 「観光以上、移住未満」の第三の人口として注目を集める「関係人口」。その土地に住んではいませんが、特定の地域との関わりを深めていく人たちのことです。新潟県中越地震(2004年)、リーマン・ショック(08年)、東日本大震災(11年)など従来の価値観を揺さぶるような出来事とともに、本当の豊かさを求める若い世代を中心として地方に現れ、広がっていきました。

 関係人口には、ここ数年で新たな傾向が見られます。まず「地域内関係人口」です。「東京(大都市)から遠く離れた東北のA町(中山間地域)に毎月、通っています」というのが一般的な関係人口だとすると、こちらは近隣の市町村などから、ある地域に関わる動きです。

 宇都宮市の釜川沿いにある「ゴールドコレクションビル」を拠点とするまちづくりのプロジェクト『ビルトザリガニ』には、おしゃれなイベントや、まちの未来を考えるワークショップを通じ、埼玉県や同市近郊から若者が関わりにやって来ています。まちに「遊びに行く」から「関わりに行く」というライフスタイルの変化といえます。

 次に「流域関係人口」です。これは日本各地の大きな川のあるエリアで生まれた関係人口です。最上川が流れる山形県の最上地域では、新庄市のフリーペーパー『季刊にゃー』編集部が最上地域の美しい暮らしを発信し、そこに呼応するかのように、金山町や鮭川村、真室川町などで活躍するローカルヒーローとヒロインのみなさんが、それぞれのコミュニティーを持ちながら、マルシェの開催などでやわらかな連携をとっています。

 秋田県の雄物川や徳島県の吉野川、島根県の江の川にも、すてきな流域関係人口のコミュニティーがあります。川はかつてのハイウエーであり、情報や社会の気分の伝達手段でした。流域は歴史や文化にも共通することが多く、お互いの関係性に親近感を持ちやすいのかもしれません。

 最後に「オンライン関係人口」です。コロナ禍の中で発展している関係人口の一種といえそうです。地域に関わるということは、その地域に足を運ぶことが大前提でしたが、それがままならない状況下で、移動を伴わない新しい関係性が育っています。

 例えば、奈良県の下北山村のお母さんから、オンラインでぬか床のつくり方を教えてもらう代わりに、横浜市の自宅から、エクセルの使い方をモニター上で手ほどき―。ユーチューブで料理のレシピを覚える世代にとっては、何の違和感もありません。

 これは知識と技術の共有です。関係人口の目指すゴールの一つは共助だと、ぼくは考えています。オンライン上でも共助は可能だということが実践され、理解され始めています。これらの新傾向から、関係人口がますます愉快で多様になっていきそうです。



ソトコト編集長 指出一正 東京都世田谷区

 【略歴】雑誌「Rod and Reel」編集長を経て現職。「関係人口」を提唱し、内閣官房や環境省の委員も務める。高崎市出身。高崎高―上智大卒。

2020/09/01掲載

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