適切な養育のために 育児は「大人育て」から
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 真夜中、高校生の携帯電話が鳴り響いた。やっとやんだかと思えばライン通知音が鳴りやまず、これは普通じゃないよと彼女に声をかけた。

 男の子から「話がしたい」「デートしょう」としつこく誘われ、断っても通じないのだという。

 ブロックすると、偽名で新しいアカウントを作り「てめえ」「ブロックしやがったな」「ラインしなきゃ死ぬ」「死んでもいんだな」「お前の家わかった」「〇〇高校」「ヤリマン」などと加速していった。

 拒否されたことにより、好意が怒りへと転換されていったのだ。知的能力の低さ、自己抑制力の未熟さ、ゆがんだ認知が見られ、すぐに警察へ届け出た。

 提示された写真の中に相手の顔があった。ストーカー規制法に触れ、警告をすぐに入れてくれた。迅速に動いたところをみると、前科があり要注意人物になっていたのかもしれない。

 ストーカー規制法では完全に拒んでいることが条件になる。ラインもインスタも全てブロックし、返事をしないよう指導された。

 「ともだちになってくれるって言っただろ」…。悲しみが伝わってくるような相手の言葉が印象に残った。この加害者、どうしたら嫌がられず、事件にならず、お友だちになってもらえるだろうか。

 社会的養護の必要な子どもたちの中に、年齢を問わず犯罪につながりそうな子どもたちは多い。非行や犯罪行為を起こさないよう方向付けていくことも私たちの重大な仕事だ。

 数年前から早稲田大の本田恵子教授が代表を務めるアンガーマネージメント研究会の矯正部門に参加している。児童相談所、鑑別所、少年院の法務教官たちと一緒に、少年の問題行動や犯罪、非行の生じるパターンを見立て、効果的な処遇を目指す。

 非行・犯罪行為に至るまでに何があったのだろうか。見えてくるものは、私たちのところにやってくる子どもたちと同じ家庭環境や発達特性、認知のゆがみ、寂しさや傷つき体験を持っている少年少女たちであった。

 家庭でのコミュニケーションがうまくいっていないことも大きな特徴だといえる。脳科学の研究では、不適切な関わりが子どもの脳を傷つけ、キレやすく周りに乱暴を働いたり、喜びや達成感を味わう機能が弱くなり、より刺激の強い快楽を求めアルコールや薬物に依存していくことがわかってきている。

 生まれた時から非行の子はいない、どの子も天心だ。子育てできる大人を育てていく必要がある。育児は妊娠した時から始まっている。ぜひその時期から適切な養育を子どもが受けられるよう、子どもの発達段階にあわせたペアレントトレーニングを始めてほしい。



ファミリーホーム「循環の森やまの家」代表 宮子宏江 前橋市富士見町引田

 【略歴】前橋市の児童養護施設「鐘の鳴る丘少年の家」に勤務した後、2017年6月にファミリーホーム「循環の森やまの家」を立ち上げる。伊勢崎市出身。

2020/09/03掲載

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