なぜ仕事をするのか 地球人として働く意識
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 私たち人間はなぜ働くのでしょうか。生活、豊かさ、自己実現、社会貢献、お金を稼ぐため、子孫を残すためなど、さまざまな理由があって当然で、どれも肯定されるべき考え方です。今回は、私が東京でトラックドライバーを、そして群馬で林業をしてきて強く感じた、働く意味についてのお話です。

 仕事には3Kや5Kと言われるものがあります。Kの種類は諸説ありますが、きつい、危険、汚い、稼げない、などでしょうか。主に第1次産業が該当し、これらは残念ながら若者に不人気な仕事とされています。そのような第1次産業ですが、かつては日本の産業の要で、1950年頃は就業者の約半分が第1次産業に従事していました。

 しかし、高度経済成長とともに第1次産業の就業者数は減少に転じました。現在は第3次産業の就業者数の割合が7割にまで増えた一方、第1次産業は5%を切っています。これを主要産業の移り変わり、時代の変化などと捉えることもできますが、本当にこのままでよいのでしょうか。

 特に林業の現場では手つかずの人工林が多くあり、日本を一つの大きな家とたとえると、庭の雑草が伸び切った廃墟(はいきょ)のような家であるようにも思えます。これからさらに高齢化、人口減少社会を迎えるにあたって、現在の状況からの劇的変化はそう簡単には見込めません。いかにして豊かな日本の国土を守っていくかは、今後の日本人の働き方に懸かっています。

 話は変わりますが、50年には約1割だった日本人の大学進学率は年々増加し、現在6割近くとなっています。人口が減り続けるなか大学の数は近年増加し、望めば誰でも大学に入ることができる時代だとも言われていて、これを「大学全入時代」と言います。そして、大卒者が就職先として第1次産業を選ぶことはほとんどありません。千人に2人程度というのが現実です。

 優秀な大学を卒業し、給料の良い安定した会社に入り、幸せな生活を送るというシナリオが崩壊しつつある近年の日本において、新しいシナリオを描くにあたってどこに第1次産業という選択肢を織り込むかは今後の課題です。

 東京などの都会でお金が生み出され続ける社会の傍らで、耕作放棄地や放置された山林が多く広がっている現実、そしてその地域間のギャップに疑問を感じます。現代社会では、職業選択の自由を奪うこと、また個性を尊重しないような意思決定は、とてもしづらい時代になっています。

 働く理由は人それぞれではありますが、お金や自己実現が重要であることと同様に、地球に生を授かった命の一つとして、「地球人として働く」という観点も、決して無視のできないものではないでしょうか。



なんもく大学事務局長 古川拓 横浜市戸塚区

 【略歴】2015年以降、横浜市から南牧村に70回以上通う。トラック運転手などの仕事をしながら、なんもく大学を運営。全都道府県を訪問。同市出身。慶応大卒。

2020/9/9掲載

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