本当の自分 魂こめて、歌い続ける
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 歌を通して一人一人の魂に語りかける。隠している本当の自分を引き出すように、その人生を変えてやろうと思って歌う―。

 何もかもが思い通りの人生などない。自分の気持ちに素直に生きることよりも、周りや世間にどう見られているかで左右されたり、履き違えた責任感が邪魔をして、結局自分の素直な気持ちよりもそのようなモノに惑わされて生きてしまう。そんな人をたくさん見てきた。

 私自身を振り返ると、震災の経験だけではなく、それ以前から波瀾(はらん)万丈だった。恵まれて育ったことも否定できない。だけど小さい頃から「孤独」というモノを強く感じていた。小さい頃から独自の世界観があったからなのだと思う。小学1年の頃、生きることが怖くなって“死んでしまうこと”と“生きること”の理由みたいなものを必死に探していた時があった。それは自分の中で何かを納得したい気持ちがあったから。

 「あの感情は何だったのだろう…」。もう大人になった私に言葉ではあの気持ちを表現することはできない。だけど感覚だけがしっかりと脳裏に焼き付いている。

 カタチが変わってもあの頃のように「孤独」と背中合わせで生きている。ただ私の場合、この孤独さを味方にしてずっと生きているではないかと最近気付き始めた。それは「詩」という共通点から。8歳の頃から「詩」を書き続けている。その時に降りてきた言葉をその瞬間に書き留める。授業中に降りてきて教科書やノートの隅っこに書きつづっていたことがよくあった。中高生になっても大人になってもその癖が染みついている。

 悔しいことに震災があって全部は持って来られなかったけど、10代の頃に書いた自分の歌詞に時を経て、心打たれることもあったりする。あの頃は孤独感が嫌で嫌で、抜け出したい気持ちでいつも書いてたけど、何ともいえない角度から生まれた「詩」は色あせることなく人の心に響くモノであると信じたい。

 自画自賛の話をしようとしているわけではないけど、独自の世界観を孤独と感じ、抜け出したかったのだろう。今ではその孤独というモノに向き合えば向き合うほど、本当の自分に出会える気がしてならない。すると自分の思いに素直に生きられないことと、孤独感に向き合えない寂しさは同じような気がした。

 教科書やノートの隅っこに書き続けていたように、普通の何げない日々の中で、確かに強く“何かを思う”トキがある。その言葉たちや思いの表現が今、曲となって伝えるために歌う楽曲へと進化していく。私はいつまでもその一人一人の心に届け、魂を揺さぶる。いくつになっても、本当の自分に出会わせるキーパーソンのような存在である歌い手でありたい。そして歌い続けていきたい。



シンガー・ソングライター 牛来美佳 太田市

 【略歴】福島県浪江町で育ち、東日本大震災発生時は福島第1原発で働く。多くの命やモノが失われ、「想いを伝え続けたい」とシンガー・ソングライターとして活動。

2020/9/15掲載

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