質の高い散歩(2) 良い道具で楽しさ倍増
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 質の高い散歩には良い道具が必須。首輪は気管の損傷やヘルニアの原因など書き切れないほど害が多く危険だ。チョークチェーン、ピンチカラー、電気ショックカラーの使用は環境省が注意を促しているほどで、もちろん論外だ。

 首輪などは痛みを伴うから、その使用自体が問題行動の原因であることが多い。心と体に胴輪を使えない理由(腫瘍にこすれる、トラウマがある)がない限りは、犬への負担が少ない、体にフィットしたH型胴輪を強く勧める。

 「首輪じゃないと大型犬を制御できない」、「胴輪だと引っ張り放題」と言う人もいるが、腕のあるトレーナーは痛みを伴う道具に頼らず、H型胴輪でどんなトレーニングもできるし、飼い主も練習さえすれば引っ張らない散歩ができる。問題は道具にも犬にもなく、人間にあるのだ。

 そもそも質の高い散歩には犬を引っ張らないことが条件であり、首輪やリードで犬を引っ張ってコントロールするという概念を捨ててほしい。代わりに声と手などの合図で犬にこうしてほしいと伝え、誘導するのだ。リードは念のための命綱であり、従わせるための道具ではない。

 しかし日本で主流の1.20メートルリードは短すぎて、どうしても犬を引っ張ってしまう。犬同士が挨拶をするにも、用を足すにも、ただ歩くにも常に人間との至近距離を強いられ、犬は全くリラックスできない。

 健康上必要な匂い嗅ぎや周りを見るといった行動にも影響が出る。例えば短いリードだと匂い嗅ぎは減り、リードが長ければ長いほど回数は増え、脈も正常値を保てる。ノーリードや10メートルでの散歩が理想的ということになるが、街中では不可能だ。

 目指すは最低でも2メートル、できれば3メートルで、安全を確保しつつ可能な時に可能な限り長く持つこと。車が多い歩道などでは短めに、人や車が少ない場所、時間帯や公園では長く。常に周りに注意を払い、早めに行動をし、長さを常に調整することで、2~3メートルでかなりの自由を与えられる。

 伸縮リードが手っ取り早いのではと思うかもしれないが、使用は危険を伴う。予告なしに急停止するので、体への衝撃が大きく、犬は絶えずむち打ちや打ち身を起こす。首輪での利用は命にもかかわる。伸縮リードは「引っ張れば伸びる」仕組みなので、犬の体には常に圧力がかかってしまう。さらに犬は引っ張れば遠くに行けることを理解し、どんどん引っ張るようになる。便利な道具に頼らず普通のロングリードを使おう。

 質の高い散歩では、犬はうれしいから何度も飼い主の方を振り返る。笑顔でうなずいたり、「うん、楽しいね」と答えてあげよう。犬は共有できる楽しさから、どんどん報告してくるようになり、誘導しやすくなるだけではなく、お互い何倍も楽しい散歩になる。



ドッグトレーナー 西尾サビーネ 嬬恋村

 【略歴】嬬恋村でドッグラン「サビーネズドッグバケーション」を経営。ドイツの訓練学校を卒業後、現地で活動。2016年、同村に移住。ドイツ出身。

2020/09/17掲載

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