趣味の菜園にて 「食」を育む営みを敬う
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 今年はコロナに翻弄(ほんろう)された年になりました。春先からの巣ごもりで普段は手の回らない些事(さじ)を片付けることができました。

 烏骨鶏やポリスブラウンなどの鶏を飼い続けてきましたが、子どもたちも家を離れ、雨漏りもひどくなってきたのを機に今春はヒヨコを買わずに小屋を解体しました。

 東京オリンピック、パラリンピックで調達される畜産物のアニマルウエルフェアが話題になりました。海外オリンピアンの嘆願声明で、産卵鶏の場合はケージフリーが求められました。サルモネラ菌対策などの安全面だけでなく健康的な飼育方法が問われました。趣味だからこそ休みの日には庭で遊ばせて天寿全うまで飼うことができました。

 購入する餌の状態から穀物相場の上昇を知ることもできました。餌のメーカーによっては如実に魚粉などの粉分が増えます。鶏は穀物だけを拾い食いするので食べ残しが増え、結局割高な穀物リッチな餌に移行せざるを得なくなります。「食」であるからには分析値が合えば良い、で済まないのはもっともです。

 今年は暇に飽かせて手をかけたので借りている菜園も含めて草一本ない状態で春の園芸シーズンを迎えました。同級生が地場の在来種の種のコレクションを始めたと聞いてから野菜の種の自家採取に取り組んでいます。子どもの頃、畑の片隅に忘れられたように残されていた採取用の株を「退治」して叱られたことを思い出します。

 畑の草除けを兼ねて今年は初めてカボチャを植えてみました。兄が北海道の友人から送られたカボチャを植え継いでいます。去年の冬至にもらって食べた際取り置いた種で苗を作りました。

 今年は種苗法改正が話題になりました。2018年の種子法廃止による米麦大豆の種子事業への規制緩和の懸念もあり、種苗育成者の権利保護や自家採取の登録制への移行が農家の利益に相反しないかが不安視されました。日本で開発された品種が海外へ流出するのを防止することについての異論はないようでした。

 浅はかな知識で中途半端に触れることができる話題ではありませんが、結論が先送りされたこともあり理解を深めたい課題です。念のためわが菜園の作物を調べてみたところ、サツマイモの紅はるかだけが登録品種でした。

 学生時代、下宿の裏山がリンゴ園でした。秋には赤い実がたわわになり、思い出に残る風景です。今は旬を狙った沼田へのリンゴの買い出しが年中行事です。通販は便利ですが、やはり重そうに枝をしならせるリンゴの木々を眺めないと気が済まないところがあります。群馬県の登録品種である新世界やぐんま名月が目当てです。今年も時季を逃さずに出かけ、育成者への例年以上のリスペクトを込めて賞味させていただきます。



正田醤油発酵研究所所長 笠原貢 栃木県佐野市

 【略歴】正田醤油館林工場長を経て、2007年から現職。日本醤油協会「しょうゆもの知り博士」。専門は応用微生物学、醸造学。藤岡市出身。高崎高―岩手大卒。


2020/9/27掲載

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