リアルイベントの価値 バーチャルという選択
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 「実体験に勝るものはないな」とつくづく思います。そして、同時期に多くの人が同様の体験をすることで新しい価値や共通言語的なものが生まれている現況を踏まえると、それを生んだコロナの影響の大きさを再認識させられます。

 今のコロナ禍において、参加者が実際に会場へ足を運ぶ「リアルイベント」に対して、「バーチャル」「オンライン」「配信」といった形式でのイベントをよく見聞きするかと思いますし、また実際に体験した人も多くいると思います。

 私は、リアルイベントを作ることが好きで現在の仕事に携わっているので、正直なところ、初めはそういったインターネットを通じてのイベント制作は気乗りしませんでした。ただ、今ではその気持ちは実体験の伴わないもの、つまり食わず嫌いとでもいうべきものだったなと感じています。

 というのも、体験・経験を重ねるにつれ、作っているのが「人」である限り工夫や緊張感が生まれるし、画面越しであっても受け手が想像力を持つ「人」である限り、共感できる体験が生まれ、何より「伝えたいことは伝わるものだな」と思えるようになったからです。

 「まぁ、こういうのもありだよね」と、同時期に多くの人が共通感覚として持ったことは、アフターコロナ、ウィズコロナにおいてもコミュニケーションや表現に大きく影響してくることでしょう。

 さて一方で、参加者が実際に会場へ足を運ぶ「リアルイベント」の価値は、ビフォーコロナより上がっているように思います。バーチャルもリアルも体験し、比較をした結果として開催するリアルイベントには、今まで以上のアイデアや資源、「さまざまな制約があるが、何とかリアルイベントで伝えたい」という強い思いが込められているからです。

 加えて、仮に開催できたとしても制限や自粛で参加できる人が少ない、つまり希少価値のようなものが生まれるためです。

 こうした状況が、制作する側にとって、以前とは質の異なる試行錯誤の時間や経験を生み、ウィズコロナ、アフターコロナにおいて、より洗練されたイベントを作り出していくための糧になることでしょう。

 イベントは一つのメディアです。主催者が参加者へ、提供する体験を通じて何かを伝え届けるための装置であり手法です。私たちのコロナ禍という共通体験は、バーチャルやオンラインでもこの装置が機能することを証明しつつ、それでもリアルという手法の効果や価値が再評価され、今後も求められ続けることを示したのではないでしょうか。



イベントプロデューサー 進藤惟史 東京都台東区

 【略歴】20歳で渡米し、東海岸で5年半を過ごす。20代半ばで帰国し、展示会の企画運営会社を経て現職。藤岡市出身。高崎経済大附属高―ニューヨーク州立大卒。

2020/10/08掲載

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