観光と地域振興 「誇り」をみんなで育む
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 多くの地域で観光を軸とした地域振興が活発化していますが、取り組みを続ける上で最も重要なのは「観光客は自分たちの地域に何を求めて訪れるのか」という視点を常に持つことです。

 地域振興の取り組みには、地域のイメージアップや集客による経済効果の向上など、多くのミッションが課されるために、観光客を受け入れる地域では、さまざまな施策やマーケティングについて議論をされ、商品開発などの試行錯誤がなされます。しかし、肝心な「観光客の視点」を明確に把握しようとする姿勢がなければ、観光地としての成長は望めません。

 「売れる」ことに懸命になりすぎるあまり、いっときの話題性を求めて奇をてらったコンテンツを発信したり、無理に地域のイメージとかけ離れたことをしてしまっては本末転倒です。観光は、地域振興の一環として持続的かつ発展的に進めることが重要であるからです。

 地域文化や生活様式をいかに明確化し、体験や商品の質をいかに洗練させるのか―。「地域らしさ」を軸に、アウトプットの精度を上げて発信することが大切です。その上で、自分たちの住む地域の売りとなる「地域らしさ」を適切にPRしていく必要があります。

 例えば、インターネットやSNS、パンフレットなどの活用で以前より情報の発信は手軽になりました。しかし、最も有力なのは、人から人への発信です。言い換えれば、訪れたお客さまに「来てよかった」「また来たい」と言ってもらえるような工夫、魅力ある地域であり続ける努力が大切ということです。それは同時に、住民のみなさんが「住んでよかった」と地元に誇りを持てるような地域を築き上げていくことにもつながるでしょう。

 そのために今、地域に必要なのは「問題を解決する力」と「問題を発見する力」です。取り組むべき地域の課題に気付き、改善していくことが大切であると考えています。また、地域に住む一人一人が、地域の課題を自分のこととして考えていく心がけが必要です。それができなければ、地域振興の成功はあり得ないからです。

 人は、なぜ観光をするのでしょうか? 日常から離れることでリフレッシュをしたり、食べ物や体験を求めて出かけたり、旅の目的はさまざまあります。そうした中、観光の最大の醍醐味(だいごみ)は、訪れた地域の文化に触れることで見聞を広め、感動することで人生をより豊かなものにしていくところにあるのではないでしょうか。地域は、この視点を忘れてはいけません。

 観光によって、多くの人の生活が豊かで幸せなものになることを期待したいと思います。



グローバル観光戦略研究所研究員 大井田琴 高崎市石原町

 【略歴】民間企業、下仁田町観光協会を経て現職。同協会で日本版DMOの立ち上げに携わり、インバウンドの市場調査や国内外向け広報も担った。二松学舎大卒。

2020/10/20掲載

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