里親制度と子の居場所 豊かな愛情が心癒やす
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 子育て歴も25年になり、子宝に恵まれた人生だ。どの子も自分の子ではないが一生懸命に子育てした。その年齢も、幼児、小学生、中学生、高校生とさまざまだった。

 そんな特殊な子育てに携わるきっかけとなったのは、児童養護施設での勤務経験だった。数えきれないほど多くの子どもたちに出会い、さまざまな家族ドラマをみた。

 親元から離れて暮らす子どもたちの心には、いつも生みの親の存在が消えることなくあった。命を輝かせて生きるには、実親への思いを肯定的なものにしていく必要がある。2年半という月日をかけながら親子関係を修復してきた中学生は「死ぬことが初めて怖いと思った。今というこの時間が幸せなのだと気付き、大切に生きようと思った」と変わっていった。

 家族との心地よい距離感が見つかると、互いを受け入れ合うゆとりができ、一緒に暮らせなくても家族の幸せを育んでいくことができる。「こんなふうになるなんて思ってもいなかったよ」と家族と再び笑い合えるようになった彼女は笑顔をみせた。

 さまざまな形があっていい。家族みんなが幸せになってもらいたいと心から願っている。

 里親制度はそういった子どもをサポートする子どものためのリトリート(癒やしの場)だといえる。心身を癒やし、悲しみや怒りや不安が溶けていくことで、本来の自分らしさと生きる輝きを取り戻していく。

 お金をかけた特別なことは必要ない。どんなことがあっても自分という存在を否定せず受け入れてくれる大人がいて、温かいご飯を一緒に食べ、たわいもない話で笑い合う、ごく普通の家庭の営みを介した対人関係の温かさが、こわばった心を緩め、温めていく。「楽になった」「未来が明るくなった」と私たちのところに来た子は言う。

 研修の受講など一定の要件を満たしていれば、里親になるのに特別な資格は必要ない。欠かせないものとして求められていることは、子どもの養育に対する理解と熱意、そして子どもへの豊かな愛情である。そこに血のつながりも関係ない。それさえも超えたもっと深いつながりがそこにはある。

 里親には、養子縁組里親、祖父母などの親族が養育する親族里親、自分の家庭に一定期間迎え入れる養育里親、虐待や非行、障がいなどより専門的な養育をする専門里親がある。正月休みや週末などに数日から1週間程度子どもを家に迎えることも可能だ。県は数日から2カ月程度の短期里親も積極的に募集している。関心のある方はぜひ児童相談所に問い合わせてほしい。

 子どものためのリトリートがもっと身近に開かれていくことを願い、みんなで子育ての楽しさや喜び、苦労を分かち合える群馬県にしよう。



ファミリーホーム「循環の森やまの家」代表 宮子宏江(前橋市富士見町引田) 

 【略歴】みやこ・ひろえ 前橋市の児童養護施設「鐘の鳴る丘少年の家」に勤務した後、2017年6月にファミリーホーム「循環の森やまの家」を立ち上げる。伊勢崎市出身。

2020/10/23掲載

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