まちの未来と関係人口 「関わりしろ」増やそう
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 人口減少と首都圏への一極集中を考える上で、「観光以上、移住未満」の第三の人口である「関係人口」は、地域の大きな起爆剤と捉えられています。ぼくはここ数年、日本の各地で「関係人口」についての講演を行う機会を多くいただいているのですが、必ずと言っていいほど、どこでも共通の質問を受けます。

 それは「このまちに若い人がやって来るために何が必要か?」というものです。これに対する答えが「関わりしろ」です。「関わりしろ」は造語で、軟らかい表現をすると、ツルツル、ピカピカではなく、ザラっとした状態です。

 例えば、奈良県天川村を「関係人口」の講座で訪れた名古屋の大学生たちがまず案内されたのは、廃校となった小学校の体育館を利用したバイオマスボイラーの燃料を間伐材でつくる施設でした。小さなまちの財源には限りがあります。温泉施設などの村内のエネルギーを少しでも自給し、経済を循環させようとする取り組みでした。

 強いアピールの完璧な観光施設ではなく、初めに村のバックヤードと懐事情を教えてもらえたことから、大学生たちはみな、村に親近感を抱きました。「この村のみなさんと何かをわたしも一緒にやってみたい」。小さいもの、弱いものとしての若い自分と、天川村という存在が重なり合ったのかもしれません。

 「関わりしろ」を感じた彼らはその夜、洞川地区の廃業した温泉旅館を借りて、一夜限りの「お出かけスナックミルキー」というプロジェクトを行いました。ここにはなんと80人以上の村の人たちが訪れて大盛況となりました。

 このように「関わりしろ」とは、誰もが関わりたくなるような余白があることを指します。完成されて取り付く島もないツルツル、ピカピカさではなく、「わたしだったらこうしてみたいな」という内発性と創造性を誘引するザラザラ感。「リノベーションまちづくり」などは「関わりしろ」のいいお手本です。

 「関わりしろ」は地域そのものにもありますし、施設や空間、プロジェクトにも存在します。福岡県那珂川市の玄関口である博多南駅前ビル、通称「ナカイチ」は1階から4階まで「関わりしろ」の仕掛けが満載です。特に2階のカフェとイベントスペースでは「ローカルプロジェクトに参加するまでの積極性はまだないけれど、そういう雰囲気のところの近くに身を置きたい」という、若い未来のローカルヒーローとヒロインの予備軍が好きなだけ気軽にそこにいられる心地よさを意識的につくり出しています。

 「関わりしろ」がとりなすことは「弱さの交換」だとぼくは考えています。地域と若い人がお互いに、弱いものを等身大に交換することで、実は楽しさやおもしろさが現れてくる。群馬に「関わりしろ」を増やしていきましょう。



ソトコト編集長 指出一正 東京都世田谷区

 【略歴】雑誌「Rod and Reel」編集長を経て現職。「関係人口」を提唱し、内閣官房や環境省の委員も務める。高崎市出身。高崎高―上智大卒。

2020/10/24掲載

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