娘の自作自販機 自分の道歩む先に輝き
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 お菓子の小さな空き箱で何かを作り始めた。サイズが小さかったのか、今度は少し大きな空き箱で黙々と作業している。そんな娘を見ながら、私はリビングへと下りた。夕飯を作っていると、娘が何かを持ってきた。

 「お母さん、これね、何度も作り直してできたの! ここを押して」。興奮気味で言いたいことが説明になってなくて、言われるまま押してみた。すると下の空洞になっている部分から消しゴムが出てきた。娘はうれしそうに話を続ける。「これね、自動販売機の仕組みを作ってるの!」

 さらに説明しながら自分で操作していると、「あっ、押さなくても揺らすと勝手に出てきちゃう…ダメだ。ちょっと待ってて、手直ししてくる」。そう言ってまた部屋にしばらくこもっていたが、夕飯になり、手直しした作品はその日は披露されなかった。

 数日後のこと、娘は自信満々に手直しした作品を持ってきた。驚くことにミカン箱をもう一回り大きくしたような空き箱で、見た感じもレベルアップしていた。表側の上部に5種類くらいのあめがディスプレーされている。

 「お母さん、ここにお金を入れて、自分の欲しいあめの下にある小さなレバーを下げてみて!」。段ボール素材の小さなレバー。お金を入れてレバーを下げると、選んだ種類のあめが一つ、下の空洞部分から出てきた。思わず「すごーい」と大きな声で盛り上がった。

 どういった手直しをしたかとか、何回も何回も考えてお金を入れると反応する小細工、選んだもの一つだけが出てくる仕組み、誇らしげに説明をしてくれた。友人たちが訪ねて来た時には、自慢げに自作の自動販売機をみんなに操作をさせて、驚く反応にうれしそうにしていた。

 もう今から7年前、娘が当時小学2年生だったころの話。この時のことをなぜか最近、強く思い出した。自動販売機を自作する娘の姿、その諦めないで一つのことに向かっていく過程が、今の私の心に改めて響いた。コロナの状況もあって世の中が不安定で、まだどんよりしているように暗いからなのか…。

 私の曲の歌詞に「私(あなた)はどこにでも行ける! ふさがないで、満ちた可能性を」とある。どんな時もたどり着きたい場所へは必ず行ける! その可能性は無限大にあって、それには老若男女問わず、揺るがない強さが諦めない理由を教えてくれるような気がする。

 今まで過ごさなかった、今まで目にも留めなかった、そんな時間に視点を向けると、もっと何かに夢中になれる自分に出会えるかもしれない。その自分はこれまでにない本当の自分かもしれない。誰かのせいや何かのせいにするのではなく、どんな時も自分の道を歩くのだ。きっと明るい未来は来る。そう信じて…。



シンガー・ソングライター 牛来美佳 太田市

 【略歴】福島県浪江町で育ち、東日本大震災発生時は福島第1原発で働く。多くの命やモノが失われ、「想いを伝え続けたい」とシンガー・ソングライターとして活動。

2020/11/06掲載

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