空き家の実態と対策(2) 高く複雑な活用の障壁
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 堤研究室では、空き家調査だけではなく空き家活用の具体的な対策についても検討を行っている。2017年春には実際の空き家の改修と活用を試み、最終的には断念した「空き家プロジェクト」を通して再認識した課題についてお伝えしたい。

 まず当然ではあるが、空き家の再活用の可否は所有者の意向に影響される。しかし、仮に所有者が空き家を再活用しようと思い立っても、立ちはだかる課題は多い。その最大の障壁は空き家を使いたいと考える利用者と所有者の感覚の隔たりにある。

 実は空き家に興味を持つ人はかなり多いが、その大半は建築物自体ではなく、「安く借りられる」「安く買える」物件に興味があるにすぎない。ところが、放置されていた空き家を再利用するためには、所有者は多額の改修コストやリスク対策の負担、そしてさまざまな記憶や思いを断ち切る必要がある。特に所有者の思い入れが強い物件ほど、結果的に交渉が成立しない場合が多い。

 一方で所有者がどうしても貸したい・売りたいと考えている空き家があっても、一般的に空き家の資産価値・市場価値は低く、不動産市場では商売にならないことから、空き家の状態はほぼ開示されていない。そのため利用希望者と所有者との接点がなく、運よく良さそうな空き家が見つかっても建築物自体の状態も程度も分からない場合が多い。この状態では、再利用に必要な修繕・改修工事のコストもリスクも予想がつかないため、手が出せる人は限られてしまう。

 近年では、空き家を含め既存建築物に特化したビジネスや地方自治体の空き家バンクなどの取り組みも目立つ。しかし、移住・住みかえ支援機構(JTI)の「マイホーム借上げ制度」のように、情報提供に加えてリスクを低減する仕組みが広く一般に浸透しないと、地方自治体に多く眠っている空き家の根本的な活用推進は難しいであろう。

 堤研究室でも空き家を探すところから開始したが、なかなか見つからなかった。ようやく数カ月後に所有者の好意により、プロジェクトの趣旨に合致した空き家を無償で借り受けることが可能な物件が見つかった。そこで移住と出店を組み合わせ、補助金に頼らない改修・経済的自立モデルを立案し、準備に取り掛かった。しかし、結果的には改修コストを回収するめどが立たず、改修工事の直前で中断に追い込まれた。最大の理由は、対象住宅の程度が非常に悪くて躯(く)体が全く使い物にならず、さまざまな費用削減の工夫を行っても予想の数倍になった改修コストに躊躇(ちゅうちょ)したためである。あらためて維持管理の重要性、そして空き家活用の難しさを痛感したプロジェクトであった。しかし、別の物件でも挑戦したいと次の機会を狙っている。



前橋工科大准教授 堤洋樹 高崎市栄町

 【略歴】九州共立大准教授を経て2011年から現職。建物の長寿命化をソフト、ハード両面から研究している。前橋市などの空き家対策支援に携わる。福岡県出身。

2018/01/05掲載

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