まちづくり大賞の訳 先進的戦略育んだ熱量
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 前橋デザインコミッション(MDC)は昨年11月で設立から1年。このヨチヨチの一般社団法人が前橋市とともに「第2回先進的まちづくり大賞・国土交通大臣賞」を頂戴しました。建設行政トップからの賞ですから、普通は工事などをして「できたモノ」をイメージしますが、この賞は「できる仕組み」を評価されたものです。

 前橋ビジョン「めぶく。」を起点に、多くの方々が議論して一昨年9月に「前橋市アーバンデザイン」を発表。推進母体として民間資金でMDCが発足したプロセスと、そこに描かれた官民連携のまちづくりの方向性を「先進的」と認められたのだと思います。

 企画局長を名乗る私ですが、MDCでの実務はまだ半年余り、単身赴任のヨソモノですので大賞を頂戴するような資格はありません。ただし、私自身が「前橋のまちづくりに関わってみたい!」と思ってやってきた当事者ですので、大賞の価値があることは大変よく理解できます。

 事業再生を主なドメインに多くの企業に関わってくる中で、成功できる企業には必ずビジョンとそれにひもづいた戦略がありますし、そうした「戦略フレームワーク」を創り出すことを支援してきました。しかし、「まちづくり」において戦略フレームワークはなかなかみられません。

 ところが、前橋の話を伺ったらここにはあったのです。「めぶく。」ビジョンと「前橋市アーバンデザイン」という戦略から成るフレームワークが存在することは驚きでした。しかも、自ら関わってみたくなる魅力的なものでした。

 まだまだ、アーバンデザインの存在価値が浸透してはいません。「分かりにくい」のは、ある意味当然で、他にないくらい「先進的」だからです。ビジネスでは定石ともいえるフレームワークが「企業」ではなく「まち」において描かれていることが「先進的」であるゆえんです。それだけに、「分かりやすさ」は今後の課題です。

 さらに重要なのは、「血が通っている」戦略であることです。私もこれまで、事業再生のプロフェッショナルとして戦略を描くことを求められてきましたが、外から来た人間が机上で描いただけの戦略はなかなか機能しません。

 実際は戦略の良しあしよりも、それを実現しようという熱量が重要です。戦略は必要に応じて修正が可能ですし、その柔軟性自体が戦略性であると言えます。しかし、それを推進する温度感を上げるのは容易ではありません。前橋のまちなかにすでにその熱量が十分あると感じています。

 前橋中央通り商店街に寝泊まりしてまちの動きを眺め、多くの方々と出会う中で、「関わってみたい!」と思った自分の直観は間違っていなかったと確信していますし、国交大臣より先に気付いていたと自負しています。



前橋デザインコミッション(MDC)企画局長 日下田伸 宇都宮市

 【略歴】清水建設で環境ビジネス、東横インで経営戦略、星野リゾートで旅館再生の事業化に携わり、2020年5月から現職。前橋と宇都宮市の2拠点生活。東京都出身。

2021/01/03掲載

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事