難民のキッズ映画教室 お化けは国境を越えて
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 2018年に米国の映画教育者、トム・フリントさんが主催する映画ワークショップに講師として参加しました。米国プロヴィデンス市で行われ、難民の子どもと地元米国人の子どもが対象です。

 難民の子どもと現地米国生徒の混合チームに分け、ブラウン大とロードアイランド・スクール・オブ・デザイン大学院の協力を得てキャンパスと大学美術館内で撮影を行い、3日間で5分のミニ映画を完成させます。テーマやストーリーは自由。子どもの自由な発想を大事にした内容です。

 私はアフガニスタン、シリア難民と地元米国人の12~14歳の男子の3人チームを担当しました。元気いっぱいの男の子たちです。美術館に連れていって「どんな映画にしたいの?」と尋ねました。18世紀の肖像画を見てアフガニスタンの子が「ここは不気味だ」というんですね。するとシリアの子が「ヒュ~」とお化けのまねをしてふざけ始めるんです。皆で笑って、お化けの映画に決まりました。

 と言っても、カメラ片手に美術館を走り回り大はしゃぎ。死んでしまった少年がお化けとなって友達の前に現れて、最後に皆お化けになる、という内容です。「お前、ここに寝て死んだふりしろ」「えっここで?」そんな調子で少年たちの撮影は進んでいきます。

 「イスラムのお化けは、どんな姿?」と質問すると「イスラムの? お化けは、お化けだよ、違いなんかないよ」というんですね。そういう意味ではなかったのですが、ばかな質問をしたと思いました。「そうか、お化けに国境なんてない!」と気付いたんです。

 国境線を引いたり、文化圏に分類したり、そんなことは子どもの世界では関係のないことだったのです。肌の色が違ったり、習慣が違ったり、信じている神様も違うけど…「お化けごっこは同じだよ!」なのです。

 えたいの知れない霊的な存在に恐れの感情を持つということは世界共通。それは非常に人間的なことであり、そこに人間性は現れている…。人的要因で起こった災禍から逃れて米国にやって来る運命となった少年から、このことに気付かされたことにドキッとしました。

 そんな彼らが作った映画は生き生きとしていました。親御さんや難民支援NPOのスタッフを招いた上映会は大盛り上がりでした。本人たちはそんな意図はないのですが、難民の少年の映画から「人間とは何か」を考えさせられました。

 難民の子どもたちの状況、学習の支援、子どもの人権について皆さまと考えられればと思います。ワークショップ詳細は以下リンクをご覧ください。https://www.risd.edu/news/stories/learning-to-connect-through-filmmaking/



ぐんま国際アカデミー(GKA)中高等部教諭、映画・映像アーティスト 小田浩之 東京都

 【略歴】GKAで映画製作の授業を実践。太田市PR映画「サルビア」で監督を務める。2018年度県文化奨励賞受賞。慶応大大学院に在籍中。東京都出身。

2021/01/08掲載

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