資料の電子化・映像化 仮想和算展示会の提案
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 筆者の手元に1935(昭和10)年7月15日の『和算関係資料展 出品目録』なる、青インキのガリ版刷りで、和綴(と)じの小冊子(写し)がある。会場は旧多野郡八幡尋常高等小学校となっている。記録によれば、この日、学事会算術研究会が同校で開かれた。先頭に立って活躍されたのは依田今朝吉訓導で、和算書で218件、参考品で22種類がピックアップされている。

 この時の観覧感想を藤岡の郷土史家、松田鏆氏が『上毛及上毛人』第213号に書き、ほぼ同じ内容を『藤岡町史』(57年)に記している。

 ようやくこの目録の解読ができ、電子化することができた。一覧表にしてみると、その規模・内容に圧倒される。現在ではどう頑張ってもこれだけ大規模の展示会は不可能に近い。

 内容の概要は次のようになる。「関孝和も群馬にゆかりのある和算家と捉えると中央・地方で活躍した弟子の建部賢弘、天明・寛政に藤田貞資・安島直円・会田安明・神谷定令などが見えている。又(また)文化・文政・天保には頗(すこぶ)る多く県内では小野栄重・市川行英・岩井重遠・齋藤宜長・剣持章行・齋藤宜義・山本賀前などが居り、明治以降には萩原禎助・岸充豊・中曽根連造などが居る」

 幕末から明治にかけては、群馬はまさに和算のメッカの様相を呈している。

 出品者には多野郡教育会、前橋市立図書館、群馬師範郷土室、酒井林三郎氏、女子師範郷土室、武孫平氏、市川智四郎氏などが挙がっている。

 最近、群馬大中央図書館に女子師範を中心に所在調査の協力をお願いしている。残念ながら個人所蔵の資料は、処分されたものが多いようである。刊本は筆者もいくつか資料の持ち合わせがあり、電子化は可能である。写本の復元は困難だが、現物が照合できれば、スキャナーで読み取り、PDF化は可能である。

 上武大名誉教授で故飯塚正明氏のご遺族が、蔵書一括を県立歴史博物館に寄贈された。その目録が『県立歴史博物館紀要』(第36号、2015年)に掲載されている。冊数1052冊を数え、特に最上流、天文・暦学の資料は群を抜いている。歴史博物館では、PDF化などの電子化が進んでいると思われる。

 そこで1935年の展示会を下敷きに、令和の仮想和算展示会を提案したい。例えば年代別に部屋を区切り、バーチャルリアリティーの技術を用いて入ってもらう。開きたい和算書のPDFを開くと中身が読め、印刷も可能である。著者や本の概要はキャプションで読めるようにする。

 県立歴史博物館、群馬大中央図書館、上毛新聞社、県和算研究会の共催・協賛なら不可能ではないと考える。ウェブ化すれば、実際の展示室は不要で、これからの新型コロナウイルス対応にもなるのではないかと思われる。



県和算研究会副会長 中村幸夫 藤岡市岡之郷

 【略歴】県和算研究会、日本数学史学会所属。民間企業を定年退職後、労働安全衛生コンサルタント業務の中村エス・ファイブ事務所設立。藤岡高―群馬大工学部卒。

2021/01/12掲載

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事