8050問題の教訓 誰も見放さない社会を
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 「8050問題」という言葉をご存じでしょうか? 8050問題とは、40~50代の子どもと70~80代の親の世帯を中心に、ひきこもり状態が長期化したことにより生じた生活面や金銭面などのさまざまな問題を指します。当事者とその家族だけでは解決できない「ひきこもり問題」をそのままにしてきたことによる新たな課題でもあります。

 8050問題の中心となる40~50代はバブル崩壊後の長引く不況のあおりを受けた世代です。彼らの多くはバブル崩壊、就職氷河期、ブラック労働、非正規雇用、リーマンショックと次々と直面する困難の中、激しくふるいにかけられ、社会のレールから外されていきました。

 当時の政府は彼らを救済するような政策は立てず、当事者とその家族に責任を負わせました。国民の多くも「自己責任」の大義名分のもと、当事者とその家族だけの問題だからと、対岸の火事としてきた印象があります。企業側も長引く不況の中、新卒一括採用、生産性、効率化をうたい新成人、即戦力を重用した結果、1度レールから外された人間を冷遇してきました。こうして彼らは社会的撤退を余儀なくされてきたのです。

 この問題の中心となる世代は、第1次ベビーブームに生まれた団塊の世代の子どもたちです。つまり第2次ベビーブームに生まれた団塊ジュニアの世代で、順調にいけば、第3次ベビーブームを生み、その子どもたちが今の日本を支えていくはずでした。

 バブル崩壊後の長引く不況を乗り越えるためにこの世代を犠牲にし、見放してきたことで、「失われた20年」だけでなく、現在、そして未来も失ったのかもしれません。

 もしこの問題が早期に解決されていれば、人口、出生率の低下も危惧されなかったかもしれません。ファミリー層の消費増により、あなたの企業の業績向上も見込めたでしょう。担い手不足で廃業する企業もなかった可能性もあります。彼らがその担い手となるからです。一人一人が背負う税金などの負担も、今より少なかったかもしれません。

 8050問題からの教訓。それは社会のレールから外れてしまった人々を見放さないことです。国は企業とは違います。企業のように人員を解雇して解決とはいかないのです。今まさに、コロナ禍で倒産、解雇が増え、多くの人々がそのような状態になりつつあります。

 今後、社会から離れてしまった人々が社会に復帰できるよう、精神的、技術的、体力的なケアを行いながら支援をしていく体制、配慮が求められます。それには、行政、企業、そして国民一人一人がこの問題に真摯(しんし)に向き合っていかなければなりません。

 この問題を人ごとにして先送りにしない、国民一人一人の本当の「自己責任」が問われることになるでしょう。



自立支援スペース「ワンステップ」代表 中沢充宏 安中市郷原

 【略歴】2014年にワンステップを立ち上げ。20年3月まで富岡市の障害者就労移行支援事業所勤務。エミューの研究を経験。元警察官。渋川市出身。東京農業大卒。

2021/01/13掲載

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